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6歳からビジャレアル育ちのCBパウ。
クラブの愛情が実った初代表招集。
posted2019/10/11 19:00
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph by
Uniphoto Press
ユーロ予選のノルウェー戦(10月12日)とスウェーデン戦(同15日)を控えるスペイン代表メンバーに、ビジャレアルからサンティ・カソルラ、ラウール・アルビオル、ヘラルド・モレノ、パウ・トーレスの4人が選ばれた。
「彼らの代表入りは彼ら自身とチームがよくやっているから。監督として名誉なことだ。4人のうち3人はカンテラ出身なので、ビジャレアルの選手育成に対する報奨でもある」
コメントを求められたハビエル・カジェハ監督の返答だが、クラブや地元ビジャレアルの人々にとって感慨ひとしおなのは、パウ・トーレスの名前があることだろう。
1997年に生まれ変わったクラブ。
彼は1997年1月16日、ビジャレアルで生まれた。
当時のビジャレアルは地方の弱小クラブだった。1980年代後半3部から2部Bリーグに昇格して、'92年から2部で戦っていたが、慢性的な赤字のせいで青息吐息。本拠地エル・マドリガル(現デ・ラ・セラミカ)の収容人数は3000人。ソシオは2500人しかおらず、空席だらけが当たり前だった。
しかし、パウの誕生から4カ月が経った5月15日、ビジャレアルは生まれ変わることを宣言する。
タイル製造大手パメサの社主であるフェルナンド・ロイグが43万2000ユーロ(現在のレートで約5100万円)でクラブを買収したのだ。
ちなみにクラブ売買の手続きはビジャレアルにあるバル、ロイグの会見はレストランで行われた。当時は事務所がなかったからである。
新オーナーとなったロイグは、'94年から運営責任者を務めていた現副会長のホセ・マヌエル・ヤネサとともに、早速いくつかのプロジェクトを進行させた。