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PSV、アヤックス連戦で気づいた事。
先発続く板倉滉がCBの牙を研ぐ。 

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本田千尋

本田千尋Chihiro Honda

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posted2019/10/03 20:00

PSV、アヤックス連戦で気づいた事。先発続く板倉滉がCBの牙を研ぐ。<Number Web> photograph by Getty Images

アヤックスのダビド・ネレスと相対するフローニンゲンの板倉滉。ブラジル代表レベルの選手と戦う厳しい日々が続く。

オランダ随一の名門は隙を見逃さない。

 76分、少しプレスが遅れたことで、リサンドロ・マルティネスにミドルシュートを叩き込まれ、これまで耐えてきたフローニンゲンの守備陣は遂に決壊した。誰かが痛恨のミスを犯したわけではない。だが、オランダ随一の名門は、退場者が出た後に生まれたほんのわずかな隙を、見逃してはくれなかった。

 板倉が振り返る。

「ゼロであそこまで行けていたので悔しいですね。退場者が1人出て、みんなはより一層気が引き締まったと思います。ただ、クオリティの高さというか、ちょっとしたプレスの寄せの甘さでああいうシュートを打たれて、それで失点してしまう。悔しいですけど、やられたなという感じです」

 79分には、途中出場のクラース・ヤン・フンテラールに裏を取られて2失点目。元オランダ代表FWの「ポジショニング」にしてやられ、フローニンゲンは、試合を0-2で落とした。

2戦で得た“悔しさ”と“充実感”。

 このアヤックス戦を終えた後の板倉の感覚は、3日前にPSV戦の後に覚えたものとほぼ同じだったかもしれない。つまり、“悔しさ”と“充実感”――。

「やっぱり楽しいですね。集中して戦っていましたが、同時に楽しさを感じながらやっていました。こういうスタジアムで、あれだけ人が入っている中でプレーできることもすごく幸せなことだと思います。このスタジアムに来ること自体が初めてでしたし、こういう環境でできることは幸せだな、と感じましたね」

 もちろん板倉が、まるで欲しかったおもちゃをようやく買ってもらえた子供のように、アヤックスのアタッカー陣との攻防を、無邪気に楽しんでいたわけではない。だが、オランダ代表も国際試合で使用するヨハン・クライフ・アレナで、大観衆が熱い視線を注ぐ中、プレーすることに喜びを覚えないサッカー選手はいないだろう。

 何より、一瞬でも隙を見せれば即失点に繋がるヒリヒリするようなやり取りは、何物にも代え難い充実感を、22歳の日本人DFに与えてくれたのではないか。

 このPSV、アヤックスとの2連戦では、敵の攻撃に晒される最後尾のポジションで出場したからこそ、板倉はCBの選手として多大な経験値を得られたはずだ。

「自分としてはボランチとCB、どちらのポジションもできるのがいいと思っています。今までも両方やってきたので、本職はどちらとも言えないですが、ボランチで勝負したいという気持ちはありつつ、ただ今このCBで出ている状況を嫌だとも思っていないですし、ポジティブに捉えることができています。本当にこういう相手と普段からリーグ戦で出来るということは、自分のためになっていると思いますね」

 そしてPSV、アヤックスの2連戦で体感した、楽しさと表裏一体の怖さ。それこそが、CBの選手の「成長」に必要なものなのかもしれない。

【次ページ】 敵PSVの中に堂安律の姿が――。

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