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PSV、アヤックス連戦で気づいた事。
先発続く板倉滉がCBの牙を研ぐ。
text by
本田千尋Chihiro Honda
photograph byGetty Images
posted2019/10/03 20:00
アヤックスのダビド・ネレスと相対するフローニンゲンの板倉滉。ブラジル代表レベルの選手と戦う厳しい日々が続く。
負けてもなぜ「楽しかった」のか?
後半にフローニンゲンがボールを持つ時間帯もあり、70分にラモン・ルンドクビストのミドルシュートで1点を返したが、反撃はそこまでだった。
アディショナルタイムに、ブルマに駄目押し弾を決められて、終わってみればスコアは1-3。
力の差を見せつけられた。
にもかかわらず、試合後、板倉は「楽しかった」と口にしたのである。
「負けたこと自体に言い訳はできないし、すごく悔しい思いはあります。けど、今日の試合では、普段はあまり感じられないような強さの相手と戦うことができたので、開始早々からすごく楽しめていました。
ただ、その中で結果が勝ちという形で終わることができていれば、もっと良かったと思います。でも、こういう相手とどんどんやって勝っていかないといけないと思うので、次の対戦相手もアヤックスですけど、すごく楽しみですね」
半年間出番無しでも腐ることはなかった。
1月、北部の商工業都市の中堅クラブに加入した板倉だったが、昨シーズン中は出場機会に恵まれなかった。
エールディビジの試合に同行しても、ダニー・バイス監督から一向に声は掛からず、ひたすらピッチサイドでアップを続ける日々。それでも腐ることはなかった。交代のために指揮官から呼ばれる当てはなかったが、入念に体を温めた。186cmと恵まれた上背の日本人DFは「今はあの半年間をすごくポジティブに捉えている」と振り返る。
「なかなか試合に出場することができませんでしたが、『どうにか出てやろう』という気持ちで練習からバチバチやっていました。その様子を監督に見てもらえて、結果こうやって先発で起用されていると思いますね。ただ、今も本当に気を抜けない状態です。毎回の練習が勝負。引き続きバチバチやっていきたいと思います」
耐えた半年間があったからこその充実感、といったところだろうか。
今季からレギュラーの座を掴み、オランダ1部の公式戦に出場し始めた板倉にとって、PSV戦は初めて臨むヨーロッパの強豪との試合だった。エールディビジの中で一味違うクオリティを持つチームとの攻防に、1人のサッカー選手として、この上ない喜びを感じたようだ。