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広島中継ぎ・中村恭平を覚醒させた、
家族、筋トレ、「理論的な正解」。 

text by

前原淳

前原淳Jun Maehara

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photograph byKYODO

posted2019/09/17 19:30

広島中継ぎ・中村恭平を覚醒させた、家族、筋トレ、「理論的な正解」。<Number Web> photograph by KYODO

先発からセットアッパーに転向して、一軍に定着した中村恭平。2017年に女優の清水ゆう子と結婚し、今は2児の父でもある。

変わるきっかけは家族の存在。

 昨年秋も球団から肩をたたかれることはなかった。ただ行き詰まりは感じていた。何かを変えなければいけない。変わるきっかけを与えてくれたのは家族の存在。'17年に結婚したゆう子夫人との間に同年9月に第1子を授かった。自分のためだけでは変われなかったかもしれない。守らなければいけない存在が背中を強く押した。

 過去に1度取り入れたときに肉離れを起こしてやめたウエートトレーニングを再開。'18年投手2冠となった大瀬良大地が師事するパフォーマンス・コーディネーターの手塚一志の門をたたいた。

 これまで明確な目的地を定められないまま進んでいたようなものだった。自分自身の中に柱がなかったことで、ぐらついていた。投球フォームもスタイルも、行き当たりばったりで、迷いが停滞感を生んでいた。

「理論的な正解が欲しいと思った」

「いい日があれば、悪い日もあった。その理由が感覚的なもので漠然としていたので、理論的な正解が欲しいと思った。根拠がないと練習のしようがないなって、9年目にようやく気づきました。首の皮がつながったので、その理論をもとに取り組んでいこうって」

 そう笑う左腕だが、悩み続けた8年の月日が信じ切る力となった。

 オフの間、誰よりも大野二軍練習場に通い、広島市内の施設で体の使い方を見つめ直した。これまで定められなかった目的地が明確となったことで、無心で突き進むことができた。

 蛇行することなくまい進したことで、視界もひらけてきた。

「いろいろ考えすぎていただけだったのかもと思った。意外とシンプルなんだなって。これまではテイクバックをとるまでのところでいろいろ考えていたけど、トップをつくってから反動で投げるくらいの意識でいい。そう考えると、楽になった」

【次ページ】 技と体の充実が、心の落ち着きを生んだ。

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中村恭平
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