バスケットボールPRESSBACK NUMBER
バスケW杯へ、海外挑戦で得た覚悟。
比江島慎「代表に捧げているんです」
text by
石川歩Ayumi Ishikawa
photograph byKiichi Matsumoto
posted2019/08/23 20:00
八村、渡邊といった新たな得点源となるプレーヤーが加わる中で、比江島(右から2人目)のチーム内での役割もいま大きく変わろうとしている。
ミニキャンプは「もっとできた」
質問の答えをじっと考えて、ゆっくり話す。言葉を選ぶときに、すっと上を向いて考える。インタビューの応じかたも、穏やかな雰囲気も、いつもと変わらない。しかし、どこか吹っ切れたような、気負いのない表情がいつもとは違う。
それは、もう前しか向かないと決めたような、すっきりした表情だった――。
5月30日、比江島はNBAダラス・マーベリックスのミニキャンプに参加すると発表した。6月5日の渡米前からワークアウトを開始し、6月16日から始まるミニキャンプに向けて準備をしていた。
「最初はミニキャンプに参加できればいいかな、くらいの気持ちでアメリカに行きましたが、ゲーム形式のミニキャンプに参加するうちに、サマーリーグに出たくなってきた。ゲームをするのが本当に楽しくて、こんな選手たちと試合のできるサマーリーグに出たいという気持ちが芽生えてきました」
ミニキャンプに参加するのは、NBAを目指す若手や新人選手が多い。当時28歳の比江島は体格の差に加えて、年齢差にも悩まされた。
「マーベリックスでは自分の得意なプレー、ドライブからのシュートとかを見せることに集中していました。実際にキャンプに参加して、自分は通用すると感じていました。
ただ、僕の年齢だと周りの選手を圧倒しないといけない。突出したスキルを見せるとか、リーダーシップもアピールしなければいけないと思っていた。もっともっとミスを恐れずに、自分が(サマーリーグのロスターに)選ばれるために積極的にいけばよかった。もっとできた、というのが正直なところです」
「劣っているとは思わなかった」
マーベリックスのミニキャンプ参加後すぐに、比江島はペリカンズのキャンプにも参加した。そこでは、マーベリックスとは違った役割を与えられたという。
チームは、7月にNBA屈指のベテランシューターJJ・レディックと契約しており、比江島はレディックとチームの状況を冷静に見ていた。
「ペリカンズでは、ドライブよりも僕のシュート力を見込んでくれました。たぶん、チームはシューターが欲しかったと思うんです。ペリカンズは、同じ時期にJJ・レディックと契約しているので、シューターを見極めたいというのがチームとしてあったと思う。僕は、Bリーグや日本代表で確率よくシュートを決めていたので、キャンプではそこを見てくれていました。
周りはNBAでドラフトされるような選手たちばかりで、やっぱり練習を一緒にやっていても上手かったけれど、練習ではけっこうやれました。周りと比べて自分が劣っているとは思わなかった」