JリーグPRESSBACK NUMBER
“神の子”F・トーレスが遂に引退。
完璧主義者の足跡と終幕への期待。
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byGetty Images
posted2019/08/22 18:00
契約期間を残しながらも引退を決意したフェルナンド・トーレス。ファンの記憶に残るゴールの数々は、色褪せることはないだろう。
ガラス細工のように繊細なトーレス。
印象的だったシーンがある。
イタリアとの準々決勝。この日、1本もシュートを打てず、85分にベンチへと退いていたF・トーレスは、延長戦に突入する前に声を掛け合うチームメイトやスタッフの輪から少し距離を取り、何もできなかった自分を責めるように、無心で爪を噛んでいた。仲間に背中を押されてハッと我に返ったが、決して輪の中には入ろうとしなかった。
天才とはえてして、ガラス細工のように繊細な生き物なのだろう。完璧主義で、理想のプレーができなければ、なぜそうなってしまったのかと、自問自答を止めない。
F・トーレスにも、若い頃からそんな一面があったように思う。
15歳でプロ、19歳で主将に。
アトレティコ・マドリーの下部組織で育ち、わずか15歳でプロ契約。16歳でトップチームに昇格し、17歳で迎えた2001-02シーズンには6ゴールを挙げて、当時リーガ2部に沈んでいたチームの1部昇格に貢献する。
そして、翌'02-03シーズンの1部でいきなり13ゴールをマークした“エル・ニーニョ(神の子)”は、そこから5シーズン連続で二桁得点を記録。瞬く間にスターダムを駆け上がり、19歳からキャプテンを務めるアトレティコでは、文字通りチームの象徴と呼べる存在となった。
さらさらのブロンドヘアをなびかせ、爆発的な加速で最終ラインの裏に抜け出すと、リンゴのような赤い頬っぺたのベビーフェイスに似合わないしたたかさで、確実にゴールを射抜く。天与のフィジカルはそれこそ“モンスター級”で、圧倒的な足もとのスキルがあるわけではないのだが、ポジショニングが絶妙だから、自然とチャンスボールが転がり込んでくる。
とりわけアトレティコ時代はバルサ・キラーとして知られ、バルサがリーガを連覇した2004-05、05-06シーズンにも、対戦した4試合すべてでゴールを決めている。