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“神の子”F・トーレスが遂に引退。
完璧主義者の足跡と終幕への期待。
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byGetty Images
posted2019/08/22 18:00
契約期間を残しながらも引退を決意したフェルナンド・トーレス。ファンの記憶に残るゴールの数々は、色褪せることはないだろう。
引退は、身体が動かなくなる前に。
その後、イタリアのACミラン、古巣のアトレティコへの復帰を経て、2018年夏にサガン鳥栖へ移籍。
Jリーグでのパフォーマンスは、それまでの輝かしい実績に見合ったものとは言いがたかったが、それでも昨シーズンの33節・横浜F・マリノス戦では、J1残留にチームを大きく前進させる決勝ゴールを奪うなど、仕事人ぶりは30代半ばを迎えても健在だった。
ただ、今年いっぱいまでの契約期間を残しながら、鳥栖2年目の今シーズン途中で「現役引退」を発表したのは、やはり常に「完璧」を求めるそのキャラクターゆえであっただろう。
「私は自分自身に対して高い要求をしているが、今はそれを満たせなくなっている。そこに到達できないのであれば、本当に身体が動かなくなってしまう前に、サッカー人生を終えたいと思った」
心のクラブに捧げた惜別ゴール。
繊細で、完璧主義者で、どこか掴みどころがないけれど、ここ一番ではとにかく勝負強かったストライカー、F・トーレス。
8月23日、盟友アンドレス・イニエスタとダビド・ビジャのいるヴィッセル神戸との試合が、この20年ですっかり大人の佇まいを身に纏った“神の子”の現役ラストゲームとなる。
そういえば、“心のクラブ”アトレティコとの2度目の別れが決まった後、2017-18シーズンのリーガ最終節でも、彼は惜別の2つのゴールを決めてサポーターを熱狂させている。
ゴールに愛され、ゴールとともに生きた男、F・トーレス──。キャリアの最後も、きっと彼らしいゴールで締め括ってくれることだろう。