欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
欧州挑戦するサッカー選手と語学問題。
中山雄太はどう克服し、試合に出たか?
text by
本田千尋Chihiro Honda
photograph byGetty Images
posted2019/08/20 11:40
2019-20シーズンは、開幕からすでに2試合でスタメンフル出場を果たしている中山雄太。着々とそのチームでの居場所を固めつつある。
サポーターと勝利を分かち合う喜び。
ようやくの出番だったが、中山が解放感で一杯になるようなことはなかったという。オランダで変わりつつあった1人の日本人青年は、かえって危機感を募らせた。
「やっと試合に出ることができたっていうよりも、このタイミングは遅いぞって自分に言い聞かせました。
初めてエールディビジ、オランダサッカーに出た部分では、感じるものは多かったですし、最後の2、3分っていうよりも、9分間出場してボールも結構触れたので、そこは大きかったと思います。でも試合が終わった時には、ただ単にデビューしただけだって自分に言い聞かせていましたね。問題はここからだ、って」
その一方で、試合に出場することで生まれた「コミュニケーション」もある。
「ズヴォレのサポーターと勝ちを分かち合う。その感覚はデビュー、試合に出るまで分からなかったです。もちろん日本でも勝つことは良かったですけど、オランダに来てからは勝利の喜び、自分が出場してる試合でサポーターと喜びを分かち合えていなかったので……やっぱり勝ちはいいなって思いましたね」
勝利の喜びを、スタジアムを訪れて後押ししてくれる観衆と分かち合う。それこそが、サッカーにおける究極の「コミュニケーション」なのかもしれない。
フル出場の裏にあった意思疎通での成長。
その後も歩みを止めなかった中山。次に出番が訪れたのは、4月7日に行われた第29節、フォルトゥナ・シッタート戦だった。前半の内に相手に退場者が出て、0-5と余裕のある試合展開だったが、今度は68分からの出場。エメン戦に比べ、プレー時間は、少しかもしれないが着実に伸びた。
そして5月に訪れた18/19シーズン最後の2連戦。12日の第33節VVVフェンロ戦、15日の最終節NACブレダ戦と、中山は先発。2試合ともフル出場を遂げたのである。「コミュニケーション」の部分を改善して、成長したからこその90分だったと言えるだろう。
「ズヴォレに来た頃よりは意思疎通が出来ているからこその、フル出場になったかと思います。その試合では、特に上下左右の指示や自分が言いたいことはしっかり言うだけでなく、チームメイトと意見を交換して、自分が主導権を握って周りを動かすことを普通にこなしていた。今はもう当たり前になっていますけど、振り返れば、もっとやれっていう言葉も自分に掛けたいなって思いますね」