欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
欧州挑戦するサッカー選手と語学問題。
中山雄太はどう克服し、試合に出たか?
text by
本田千尋Chihiro Honda
photograph byGetty Images
posted2019/08/20 11:40
2019-20シーズンは、開幕からすでに2試合でスタメンフル出場を果たしている中山雄太。着々とそのチームでの居場所を固めつつある。
「もっとコミュニケーションを!」と。
「スタム監督には『もっとコミュニケーションを取ってくれ』って言われていました。自分の言いたいことを、しっかりと言えるか。語彙力だったり、語学の問題もありましたけど、『その上で、それを踏まえてもっともっと表現して行かないといけない』っていうのは、スタム監督も言っていましたね」
サッカー選手に限らず、多くの日本人海外移住者がぶつかって来たであろう「壁」に、中山もぶち当たったのである。
もちろん日本にいた頃から準備はしていた。英語の勉強をしていた。だが、おそらく多くの日本人がそうであるように、中山の心の中には、現地に行けばなんとかなるだろう、そんな楽観的な考えもあったという。
「なんだかんだ行けるだろうっていう気持ちも、まあ、少なからずありました。語学に関しては、僕の場合は日本で勉強したことが全く意味がなかった、というわけではなかったので、やっておいて良かった部分もあります。それでも慣れるまでに長い期間、時間がかかったので、もっとやるべきだったな、っていう風には思いましたね」
「しっかりと自分を表現するっていう部分」
一般的に、日本にいると、海外に住めばその国の言葉を月日の流れに比例して習得できる、と考えがちだ。しかし、実際に住むと、現地語の習得のためには、日本にいた時と同様に、もしくはそれ以上に不断の努力が必要になる。
もちろん日本にいた頃にどれだけ行き先の言葉を学んでいたか、その準備も移住後の言語習得のスピードを左右する。しかし、現地で外国人との間の「コミュニケーション」に適応するには、個人差はあるにせよ、一定の時間は必要になるだろう。
中山自身、オランダへと向かう最初の飛行機の中で「日本にいる時の自分とは、変わらなきゃいけない」と考えていた。だが、人は、変わろうと思って、すぐに変われるものでもない。
「気持ちや意識はすぐに変えられるものですけど、語学の部分では、どうしても時間が必要な部分はあると思います。僕としては、コミュニケーションのところも問題視しつつ、技術があれば使ってもらえるだろうっていう意識もあった。ただ振り返ると、しっかりと自分を表現するっていう部分では、プレーも、プレー以外のコミュニケーションでも、もっとやらなければいけない状況にいましたね」