欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
欧州挑戦するサッカー選手と語学問題。
中山雄太はどう克服し、試合に出たか?
text by
本田千尋Chihiro Honda
photograph byGetty Images
posted2019/08/20 11:40
2019-20シーズンは、開幕からすでに2試合でスタメンフル出場を果たしている中山雄太。着々とそのチームでの居場所を固めつつある。
技術があれば使ってもらえる……という錯覚。
獲得の際にズヴォレ側からは、特に英語ができるのか、言葉に関する問い合わせもあったという。中山は「堪能ではない」ことを伝えた。それでも実力面を評価され、3年半契約の完全移籍に繋がった。
そうした経緯があったことを踏まえると、中山が「技術があれば使ってもらえるだろう」と考えたのも無理はない。
だが、スタム前監督は、とにかく「コミュニケーション」を要求してくる。そして、強面のオランダ人指揮官が求めてきたものは、“語学力”というよりは、“表現力”と言い換えた方が相応しいかもしれない内容だった。
スタム前監督は、中山に対して、次のように言っていたという。
「コーチングは、最悪日本語でもリスペクトする」
どんな形でもいいから、自分の考えをしっかりと表に現して、相手に伝えろ――。スタム前監督は、そんなことを言いたかったのかもしれない。
スタム前監督の中では中山は守備の選手。試合中は守っている時に「コーチング」で味方を動かすポジションだ。現役時代はCBを務めていたからこそ、スタム前監督は「コミュニケーション」の重要性を説いていたのだろう。そして中山は、少しずつ英語を使いながら、チームメイトと「コミュニケーション」を取っていった。
「自己表現が苦手な日本人」という問題。
「拙いながらも自分の考えを言ったり、自分を表現するっていう部分では、自分が相手にどう主張するべきか、常に考えていました。
自分を表現するというのは日本人にとって苦手な部分だと思うのですが、こっちにいる外国人は、自分の意見を主張することだったり、自分が思ったことを発言すること、表現することは日常的なことだと思います」
スタム前監督の目に、中山の「コミュニケーション」が物足りなく映ったのは、「発言」を取り巻く文化的な違いも関係があるのかもしれない。
一般的に、日本人は集団の中で自分の意見を“正直に”「発言」する傾向はないだろう。移り住んで半年が経った今、中山は、日本とオランダにおける「発言」の違いに関して、次のように考えるようになった。