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全英制覇・渋野日向子、笑顔の力。
「見たことがない」米TVアナも驚愕。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byKYODO NEWS
posted2019/08/05 17:00
最終ラウンドでも観客に笑顔でハイタッチをしていた渋野。
「サンキュー」の一言。
優勝後も渋野の笑顔は全開だった。優勝スピーチは、スポンサーや主催団体の名前をメモを見ながら英語で読み上げた後、ひと呼吸置き、あらためて満面の笑顔で「サンキュー!」の一言。
それは、流暢な英語を操る欧米人選手たちの立派な優勝スピーチと比べれば、内容は無く、「サンキュー」の一言だけ。たったそれだけのスピーチだった。
だが、それで十分。その一言だけで十分。たどたどしい英語で一生懸命に読み上げたからこそ、そのひたむきさに大観衆は頷きながら聞いていた。
あらためて見せた笑顔と「サンキュー!」の一言が、とてもピュアだったからこそ、人々は彼女に惜しみない拍手を送った。
現地では現地の人々への感謝を込めて、現地の言葉で感想を述べ、お礼を述べる。その姿勢が現地の人々に受け入れられ、声援やサポートにつながっていく。
小林浩美が先駆者だった。
日本の女子選手では、小林浩美がその先駆者だったと言っていい。米LPGAで初優勝を遂げたとき、マイクを向けられた小林がはち切れそうな笑顔で「Just happy.」と一言だけ言った姿が今でも忘れられない。
宮里藍も英語をしゃべることにはとても積極的で、彼女も笑顔が素敵だった。
小林は米ツアーに腰を据えて本格参戦し、宮里もそのスタイルに追随し、どちらも米ツアーや世界の舞台で頂点を極めることを目指しつつ、残念ながらメジャー制覇は叶わなかった。
渋野は、そんな諸先輩たちが教えてくれた「笑顔と英語」を自ずと身に付け、生かして勝った感がある。だが、諸先輩たちとの決定的な違いは、米ツアーや世界の舞台より「日本」を見つめているところだ。