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アーセナルにとっては最悪の夏か。
補強は若手中心、主将は移籍志願。
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byUniphoto Press
posted2019/07/21 11:40
新戦力補強が進まない中、頼れる主将DFコシェルニーが移籍を志願。アーセナルは上位3クラブを脅かす存在になれるか。
コシェルニーとエメリの溝は深まるばかり。
ただ、選手の模範とされてきたコシェルニーが行動に移したのだから、アーセナル側にも少なからず責任はあるはずだ。現行の契約を1年延長し、2021年6月末日まで残留する方向で話し合いが進んでいたことは確認が取れている。しかし、契約延長には至っていない。ここに、なんらかのすれ違いが生じた公算が大きい。
たとえば、口頭合意でそれぞれの解釈が違っていた、と考えられはしないだろうか。アーセナル側が軽い感じで承諾した内容を、コシェルニーがクラブの公式見解と理解したとか……。
エメリ監督は、コシェルニーが謝罪してもプレシーズンツアーに呼び戻さず、ペナルティとして個人メニューのトレーニングを課すという。一方、コシェルニーも頭を下げるつもりはなく、フランス帰還を強行するという。すっかりこじれてしまった。溝は埋まりそうもない。
このボタンの掛け違いは、アーセナルにとって大きすぎるダメージだ。コシェルニーはただひとり安定しているセンターバックであり、新シーズンもレギュラーがほぼ約束されていたからだ。ソクラティスはイエローカード・コレクターで、その大半がダイブによるものだ。恥ずかしい。期待のコンスタンティノス・マブロパノスは成長が止まった。ムスタフィは前述したとおりである。
人事さえ進めばCLも狙える?
リバプールは現状維持でも十分強い。マンチェスター・シティはアトレティコ・マドリーからロドリゴを獲得し、懸案だったアンカーの充実を図った。トッテナムは即戦力のMFタンギ・ヌドンベレをリヨンから手に入れ、ローマに所属するMFニコロ・ザニオーロとの交渉も大詰めを迎えている。
この3チームを、アーセナルが上回るのは至難の業だ。
しかし、チェルシーは18歳未満の選手を獲得する際にルール違反を犯したため、今夏と来年1月の市場で身動きが取れない。ユナイテッドは退団を希望するポグバ、ロメル・ルカクの売却交渉が遅々として進まず、なおかつ補強プランの軸をアーロン・ワン・ビサカやダニエル・ジェームズといった若手に切り替えている。チーム力が劇的に向上するはずがない。
したがってアーセナルは、夏の人事さえスムーズに運べば、少なくとも4位以内、すなわちチャンピオンズリーグ出場権奪還の可能性が大きくなるはずだった。