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本田、麻也獲得に尽力したVVV会長。
勇退決断で藤田俊哉が聞いた秘話。

posted2018/05/17 11:15

 
本田、麻也獲得に尽力したVVV会長。勇退決断で藤田俊哉が聞いた秘話。<Number Web> photograph by AFLO

VVV所属時の吉田麻也(左)と堅く握手するハイ・ベルデン会長。彼の存在があったからこそ、日本人選手の飛躍があった。

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藤田俊哉

藤田俊哉Toshiya Fujita

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 VVVフェンロのハイ・ベルデン会長に「オレンジナッソー勲章」が授与された。

 これはオランダで最も権威のある勲章だという。それにタイミングを合わせるかのように、15年間にわたるクラブ会長職からの退任も発表された。勲章の授与式、退任セレモニーのどちらも盛大に行われ、ハイ会長の多大なる功績をみんなで祝った。

 とくにクラブは、リーグ戦で最も盛り上がるリンブルフダービーのハーフタイムに退任セレモニーを行う粋な計らいを見せ、満員のスタジアムで長年の感謝の意を示した。

 私もリーズからフェンロへ向かい、勲章授与式からリーグ戦での退任セレモニーまで参加した。会長のサポートのおかげで3年半クラブに在籍することができ、VVVフェンロでコーチとなるチャンスをもらえた。それだけではなく、ハイ会長は2013年5月23日に国立競技場で行った私の引退送別試合にも参加してくれた。私が今もなおヨーロッパで活動できているのも、会長がその道を開いてくれたからに他ならない。

 言葉では表現しきれないほどの大きな感謝と尊敬の念を抱き、私はこの日を迎えた。

 退任は非常に寂しいが、ハイ会長自身が幕を引き、クラブも自分も新たな時代を迎えたいと考えての決断だったという。リタイヤした後の人生プランも明確に持っているとのことで、68歳となった会長の表情は情熱的でもあった。スマートに新たなスタートを切ったあたりは、穏やかな性格の彼らしいと感じた。

本田獲得でPSVとは対照的な評価。

 セレモニーの翌日、ハイ会長は私を自宅に招いてくれた。

 綺麗に手入れされた芝生のガーデンテラスでゆっくりとした午後を過ごし、クラブと自身の今日までの活動を振り返った。

 100年の歴史を持つVVVフェンロは、過去3度のリーグ優勝経験がある。うち2回がハイ会長時代に獲得したもの。それは「非常にエモーショナルだった」という。

 本田圭佑の獲得を決めたと言われている、PSVアイントホーフェンとの練習試合の話も楽しかった。その試合、本田はFKからゴールを決めた。会長やVVVのスカウト陣は高く評価した一方で、となりにいたPSVのスカウト陣は、本田のスピードが不安要素になるとの見立てだったという。両クラブで見方が分かれたが「自分たちは彼の能力を信じていた!」と誇らしげだった。

【次ページ】 カレン・ロバートの活躍も印象深い。

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