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柏DF杉井颯がトップに上がるまで。
客観視し、腐らず、新視点を常に……。 

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安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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photograph byTakahito Ando

posted2019/06/16 10:00

柏DF杉井颯がトップに上がるまで。客観視し、腐らず、新視点を常に……。<Number Web> photograph by Takahito Ando

柏レイソルのチームカラーに染まってプレーする杉井颯。チーム昇格のためにも、頼もしい新戦力となりつつある。

「自分が入ったら、どういうプレーをするか」

 筑波大の練習参加を機に、彼の目の色は変わった。

 これまで全く知らなかった環境に触れたことで、彼の知見がさらに広がり、柏でプレーすることの意義を再確認することとなった。

 自分では気付かぬうちに急成長を遂げた杉井に、朗報が届くのは時間の問題だった。

 2018年夏の日本クラブユース選手権を終えると、もう一度面談の機会が訪れ、彼はそこで「おめでとう」という言葉をもらうことになる。

 トップ昇格が決まったのだった。

「正直、喜びよりも驚きが先に来ました。でも、すぐに感謝の気持ちが湧き上がったし、『より自覚を持ってやらないといけない』と思うようになったんです。『上げて良かった』とクラブの人たちに思ってもらわないといけないと気が引き締まりました」

 筑波大でお世話になった小井土正亮監督にもそのことはすぐに報告。トップ昇格を掴み取った杉井は、トップチームの試合を観る目にまた少し変化が訪れていた。

「細かい選手のプレーを観ながらも、『自分が入ったら、どういうプレーをするか』など、より具体的に考えながら観るようになりましたね」

「拡声器を持っての挨拶は自分の夢でした」

 迎えた2019年シーズン。夢だった柏のトップチームの選手として、プロサッカー人生の幕を明けると、チャンスはすぐにやってきた。

 5月22日のホームで行われたルヴァンカップグループステージ最終節・ベガルタ仙台戦。記念すべきJデビュー戦を、憧れの三協フロンテア柏で、スタメン出場という形で飾ることとなった。

「仙台戦は『サッカーってこんなに楽しいんだな』と思った。まず目標とする舞台に立つことができたし、サポーターからの応援もすごかったし、相手のFWに石原直樹選手という、自分が小学生の時にプレーを見ていた選手とマッチアップできて、凄く楽しかった。これでチャンスを掴んで、Jリーグも出るんだと本気で思えた」
 そして、6月1日のJ2リーグ・第16節のホーム・FC岐阜戦において、今度はリーグ戦デビューをスタメンフル出場で飾る。

 小学生時代に所属した柏ラッセルの先輩でもある岐阜のFW山岸祐也とのマッチアップで引けを取らず、左足のキックで攻撃の起点にもなり、1-0の完封勝利に貢献をした。

「ルヴァンとサポーターの人数も緊張感も全く違った。ルヴァンでピッチから見た日立台(三協フロンテア柏)と、リーグで見た日立台は全然違った。雰囲気がまず違うし、迫力が全然違ったんです。

 難しい試合展開でしたが、デビュー戦で完封勝利できたことはサポーターのおかげだと素直に思いました」

 ずっとスタンドで観ていた光景は、ピッチから観たら最高の光景であった。

 試合後、彼はサポーターの扇動を受けて、拡声器を受け取り、ゴール裏のお立ち台に立って、チャントの音頭をとった。

「最後の拡声器を持っての挨拶は自分の夢でした。リーグデビュー戦であのお立ち台に立てるとは思わなかったので、それが叶ったのは嬉しかったし、また活躍して、勝って立ちたいなと思った。あの風景もやっぱり最高でした。こんなに多くの熱い仲間がいるんだなと思った」

 続く第17節のアウェイ・愛媛FC戦もスタメンフル出場を果たした杉井。チームは1-3で敗戦と、厳しい結果となった。

【次ページ】 「『レイソルの杉井颯』として歩いていきたい」

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