“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
柏DF杉井颯がトップに上がるまで。
客観視し、腐らず、新視点を常に……。
posted2019/06/16 10:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
ずっと憧れ続けて見つめた舞台だった。
柏レイソルのルーキー杉井颯にとって、三協フロンテア柏スタジアムのピッチは、「どうしても立ちたい場所」であった。
「レイソルは地元で生まれ育った人間として憧れのクラブ。物心ついた頃から試合を観に行っていました。小学生の頃からレイソルのプロサッカー選手になりたいと思っていたし、下部組織に入りたいと思っていた。小6の秋くらいに話をいただいて、ジュニアユースから入らせてもらったんです。そこからは下部組織の人間として、ずっと憧れを持って試合を観ていました」
杉井は柏レイソルのホームタウンの1つである流山市で生まれ育ち、中学1年生から柏U-15に入ると、U-18、そしてトップ昇格と柏と共に成長してきた。下部組織で育った者であれば、トップチームのホームスタジアムでプレーすることは憧れであり、大きな目標であることは当然のことだろう。
だが、杉井にとって柏U-18で過ごした日々が、その想いをより強く、深いものにしていた。
大きな転機となったのが、高2の夏だった。
トップチームの試合を食い入るように見続けた。
「先輩である古賀太陽さん、中川創さん、宮本駿晃さんと、DFの選手がトップ昇格することになって、『自分が来年昇格するのは難しいのではないか』と思うようになりました。僕はCBだけど、そこまで高さもないし、自分がプロのレベルに達していないと思っていたので、この時点で覚悟はしていましたね」
彼の性格は常に周りに気を配ることができ、コミュニケーション能力も高く、真面目で実直に取り組む姿勢である。幼いときからのその長所が、この時ばかりは逆に働いた。自分の置かれた立場、状況をより厳しく感じ取れる人間だっただけに、ずっと夢だったトップ昇格はもはや叶わないかもしれない……という状況を敏感に感じ取ってしまっていたのだ。
「それでもやっぱりトップでプレーしたいという気持ちは強かったので、トップの試合を観る時はずっと『自分がここに立ったらどういうプレーをすべきなのか』、『この場に立つために必要なものは何なのか』と食い入るように観ていました。中学校でレイソルに入って、ホームゲームをほぼ全て観るようになってからも、ずっと変わっていませんでした」