フランス・フットボール通信BACK NUMBER
アジア王者はコパでどこまで戦える?
バルサから来たカタール代表監督の弁。
text by
ジェレミー・ドクトゥールJeremy Docteur
photograph byQFA
posted2019/06/16 08:00
バルサの育成機関で働いていたフェリックス・サンチェスは、今年43歳。2006年から、カタール代表の強化に携わってきた。
ほぼ国内リーグの選手だけで代表を構成。
――あなたはほとんどの選手をU-19時代から知っていて、家族のような雰囲気をチームの中に作りあげました。
「カタールは小国で、国内リーグにも12チームしかない。選手はお互いをよく知っているし、代表でも長く一緒にプレーしているのは大きなアドバンテージだ」
――2006年からカタールで仕事をしていますが、どのぐらい進歩したのでしょうか?
「大きな進歩が得られたが、重要なのは長期的なプランを実行することだった。目の前の結果が求められるサッカーというスポーツで、それを実現するのは難しい。しかしここは違っていた。
最新設備を備えた『アスパイア(カタールの総合スポーツアカデミー)』が、将来を担う子供たちに対して主導的な役割を果たし、リーグと代表の懸け橋となった。そしてアジアカップに優勝したことで、多くの人々が代表との一体感を感じ、若者がサッカーを通しての成功を夢見るようになった」
最近は外国人選手の帰化戦略も下火に。
――カタールの若者たちがヨーロッパに出ていくために欠けているものは何でしょうか?
「彼らの能力がヨーロッパではまだ認知されていない。ヨーロッパでプレーするのは、スポーツの面でもまた人間面からも成熟のためのいい経験になる。彼らはそれなりのレベルにあるが、海外のサッカーを経験し、生活に慣れるのはカタールに生まれた人間にとっては簡単ではない」
――近年は大量の帰化政策は影を潜め、アジアカップでもアスパイアで育成された若手がチームの主力でした。それは2022年に向けての最優先課題が、育成であることの表明だったわけですか?
「もちろんだ。ここでは人的資源が限られている。サッカーの歴史と伝統を有する他の国々以上に、カタールでは育成が大きな意味を持つ。自分たちの持つ手段でサッカーを進化させねばならない。育成は独自の選手形成を助長し、国への帰属意識を高める効果がある」