- #1
- #2
熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
「貧民街育ちで銃撃戦が日常」「酒乱で恋人を木に縛りつけ」皇帝アドリアーノの“実は親思い秘話”… 引退後40歳の今、何してる?
posted2022/07/18 17:00
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Naoya Sanuki
フットボール王国ブラジルには、規格外の能力を発揮する一方、無責任な振る舞いでトラブルの山を築いた問題児が少なくない。
ブラジルにいた数々の問題児たち
キング・ペレと共に1958年と1962年のワールドカップ(W杯)を制覇した稀代の右ウイング・ガリンシャは、晩年はアルコール中毒になり、貧困のうちに亡くなった。
名手クライフから「ペナルティエリア内では世界一のFW」と激賞されたロマーリオは、今でこそ上院議員だが、夜遊びが大好きで唯我独尊。練習への遅刻や監督批判は日常茶飯事だった。
気迫溢れるプレーで「野獣」と呼ばれたエジムンド(2000年代前半に東京ヴェルディ、浦和レッズでも活躍)も荒々しい気性で、監督、チームメイト、相手チームの選手との諍いが絶えなかった。私生活でも、深夜、ナイトクラブからの帰りに自動車事故を起こして3人を死なせ、対戦相手のサポーターから「人殺し」コールを浴びた。
若手の頃、「天才ドリブラー」と謳われたロビーニョは、ACミラン在籍中の2013年にナイトクラブで若い女性を集団で暴行したと訴えられ、イタリア最高裁から禁固9年の実刑判決を受けた。
そして、セリエAインテルで度肝を抜くようなゴールを連発して「インペラトーレ」(皇帝)と呼ばれたが、最愛の父の死のショックから立ち直ることができず、酒浸りとなって練習への遅刻や不参加を繰り返し、事実上、28歳の若さで現役を終えた男がいる。
「自分を制御できていたら世界一のCFになれたのに」
アドリアーノ・レイチ・リベイロ。2月で40歳になった。
プロレスラー顔負けの逞しい肉体でマーカーをなぎ倒し、30m、40mの距離からでも委細構わず豪快なシュートを叩き込んだ。
代理人を務めた元ブラジル代表GKジウマール・リナルディ(サンパウロなどで活躍し、1995年から97年までセレッソ大阪でもプレー)は、「異次元の才能の持ち主。もう少し自分をコントロールできていたら、間違いなく世界一のCFになれた」と悔しがる。
リオデジャネイロ各地にある貧民街(ファベーラと呼ばれる)の出身。麻薬の売人や犯罪者が跋扈し、彼らの内部抗争や警察との銃撃戦が絶えない地区で生まれ育った。
父アウミールさんは事務所の使い走りで、母ロジウダさんは掃除婦。アドリアーノはボールを蹴ることが大好きで、少年チームで嬉々としてプレーした。