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Mr.ユーベが禁断のインテル就任。
勝利に執着する闘将コンテの原点。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2019/06/13 11:45

Mr.ユーベが禁断のインテル就任。勝利に執着する闘将コンテの原点。<Number Web> photograph by Getty Images

選手として13年間ユベントスでプレー、監督としても3連覇達成。「Mr.ユーベ」ことコンテは宿敵インテルの監督として成功できるか。

問題児イカルディはすでに構想外?

 グラウンドの内外で厳しい規律を持ち込むコンテが監督になったからには、派手なナイトライフやSNSでの炎上騒ぎは御法度だ。

 差し詰め放蕩の日々は終わったと観念しているのはMFナインゴランあたりだろう。

 昨季、クラブとチームに混乱をもたらした前主将イカルディは(代理人妻ワンダとともに)、すでに構想外であると突き付けられている。イカルディとFWディバラ(ユベントス)との爆弾トレードの噂は根強く、FFP(ファイナンシャル・フェアプレー)規定によって今季シーズン決算で黒字収支を出さなくてはならない上層部は、6月末の期限までに何らかの動きを見せるのではないか。

 昨年12月に就任したマロッタCEOは、FWジェコ(ローマ)やFWルカク(マンチェスター・ユナイテッド)といった重量級ストライカーに加え、FWキエーザ(フィオレンティーナ)やMFバレッラ(カリアリ)といった一線級の若手を補強候補に上げ、骨太なチーム編成を急ぐ。

 8連覇王者ユベントスを初め、上位クラブの指揮官が軒並み変わる来季は、おそらくカンピオナートの勢力図もプレーも変わるだろう。

 今、コンテのインテルはその急先鋒に立つ。

12年前に見た異様な光景。

 なぜ、この男はこんなに怒っているのだろう。

 今から12年前、アレッツォという小さな古都でセリエBの試合を取材した。それは、前年の審判操作事件で2部に落ちていたユベントスが、アウェーゲームでセリエA昇格を決めた試合だった。

 試合後、控え目でぬるいお祝いムードの会見室で、ひとり怒り狂っていたのが、アレッツォ監督でまだ駆け出しの指導者コンテだった。

 日本人の取材者は僕ひとりで、静まり返った会見場の困惑した空気を今もよく覚えている。

 相手はドイツW杯王者5人とバロンドール選手のネドベドを抱えるユーベで、アレッツォの5失点大敗はやむなしと誰もが考えていた。さらに言えば、ユーベはコンテが主将まで務めた愛すべき古巣だった。

 だが、監督になったコンテは自ら率いるチームがどうプレーすべきだったか、どうやればユーベを倒せたか、ということを血相変えて延々とまくし立てていた。異様な光景だった。

【次ページ】 コンテの原点にある両親の存在。

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