寡黙なピルロも信頼する鬼軍曹。

　6シーズンを過ごしたユーベ時代に重用されたDFアサモアは、もうじきインテルで再会する“鬼軍曹”コンテのやり方を思い出す。

「彼が監督になったら、サボったり手抜きしたり、気を緩めるなんて一切許されない。コンテにとっては目の前にいる人間の名前とか前の年に何を勝ったかとかは何の意味もないんだ。本当に次の試合に勝つことにしか興味がない」

　ただの冷血漢か卑劣漢なら、ユーベやイタリア代表時代の選手たちから、あれほど熱狂的に慕われることはなかっただろう。寡黙で知られる天才ピルロをして「コンテのためなら火の中でも飛び込む」とまで言わしめたほどだ。

「チームのNo.1プレーヤーだろうが、一番出場数が少ない選手だろうが、コンテは公平に扱ってくれる。必ず一対一で、面と向かって話をしてくれる」（アサモア）

　だから、コンテは『フルメタル・ジャケット』のハートマン軍曹と同じ運命は辿らない。

　自他ともに認める通り、コンテは人を選ぶ。だから、一度信頼関係になれば、結びつきは驚くほど強固なものになる。

「私は勝利することに取り憑かれている。もし、勝つ見込みがないのなら、もう1年浪人しても私としては全然問題がなかった」

　勝てると確信しているからこそ、コンテはインテルの監督を引き受けたのだ。夏のバカンスなど必要ない、もう十分にとった。

　全貌が明らかになるのはこれからだが、“鬼軍曹”率いるインテルに期待するな、という方が無理な話だ。