ビッグマッチ・インサイドBACK NUMBER
戦力外通告からCL優勝の逆転人生。
諦めの悪い主将ヘンダーソンの涙。
text by
寺沢薫Kaoru Terasawa
photograph byAFLO
posted2019/06/03 11:10
父親のブライアンさんと写真に収まるジョーダン・ヘンダーソン。子どもの頃からの夢をかなえた瞬間だった。
周囲の人々を背負い、初タイトル。
「彼はそれを一度だけでなく二度も達成した。そして今日、彼はそれを勝ち取った。本当に嬉しいよ」
そう元気に笑うブライアンさんだが、実は5年前には、咽喉がんと診断され闘病生活を送っていた。病気を告げられた後、ブライアンさんは息子にしばらくそれを伝えなかったそうだ。当時、リバプールはプレミアで優勝争いをしており、息子の集中力を乱したくなかったのだという。
利他的なパーソナリティは、元警察官でもあり常に誰かのために働いてきたそんな父親譲りなのだろう。
父の病気がわかって以降は、ファンのため、仲間のためにという思いに加えて、「父に強い気持ちを持ってもらえるようなプレー」を心がけるようになった。
そうやって周囲の人々の思いをひとつずつ背負いながら、とうとう手に入れたリバプールでの初タイトル。きっと、万感の思いだったに違いない。