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主将が、闘将が、見たCLの悪夢。
ミランが打ち砕かれたトルコの夜。 

text by

弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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photograph byLFC Foundation/Liverpool FC via Getty Images

posted2019/05/29 17:30

主将が、闘将が、見たCLの悪夢。ミランが打ち砕かれたトルコの夜。<Number Web> photograph by LFC Foundation/Liverpool FC via Getty Images

アンフィールドで行われたチャリティマッチ「リバプール・レジェンズvs.ミラン・グローリエ」のワンシーン。伝説のメンバーたちが再会を果たした。

理屈を超越した時間。

「それでもね」と、アンチェロッティは注釈をつける。

「(イスタンブールの決勝は)もう後がないシーズン最後の試合で、(CLという)最も大事なタイトルがかかった極限状況だった。敗因を不運に求めるのは私の信条に反するんだが、あんな特殊な状況を戦術的にこうだったああだったと分析する意味はあまりないように思う。あれは理屈を超越した6分間だった」

 あの夜、リバプールを大逆転に導いた理由らしきものは見つけられても、すべてを解明することはできない。名将はそう言っているのだ。

トラウマを語るレジェンドたち。

 当時、37歳の誕生日を1カ月後に控えていた主将マルディーニは、年齢的にイスタンブールでの決勝がキャリア最後の欧州制覇のチャンスだろうと考えていた。現在ミランのフロント職に就く伝説の主将は、当時のトラウマを語っている。

「イスタンブールの決勝の後、セリエAの最終節が残っていたが誰ひとりプレーする気になれなかった。シーズンオフに入っても、あの試合のことが思い出されて全然休めない。何度も眠れない夜を過ごした」

 リバプールの3点目となるPKを与えてしまったMFガットゥーゾに至っては、優勝を逃した責任は自分にあると考え、シーズン終了後もうミランにはいられないとクラブを去る決意を固めていた。

「あの敗戦をどうしても受け入れられなかった」

 慕っていたガッリアーニ副会長がガットゥーゾを強く慰留し、「残ると言うまで外に出さん!」と彼をクラブのトロフィー・ルームに9時間も“監禁”した話は有名だ。

 あの夜、イスタンブールで悪夢を見たミランの誰もが、一度絶望の淵をのぞいた。

 彼らはそこから這い上がり、2年後の'06-07年シーズンに、アテネでの決勝戦でリバプールにリターンマッチを挑み、歴史的リベンジを果たした。

【次ページ】 CLの借りはCLでしか返せない。

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