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恩師モウリーニョも脱帽の人格者。
EL決勝は男チェフの最後を見逃すな。
posted2019/05/29 11:45
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph by
Uniphoto Press
なにかとケチがついている。
今回のヨーロッパリーグ決勝は、ピッチ外のネガティブな話題が先行中だ。
開催地はアゼルバイジャンの首都バクーである。この国とアルメニアが政治的な問題を抱えていることは、読者の皆さんもすでにご存じだろう。アゼルバイジャン西部の町、ナゴル・カラバフを巡る紛争は決着する見通しが立たず、セキュリティー上の問題はかねてから指摘されていた。
グループステージでカラバフと対戦した際も、アーセナルはアルメニア代表のヘンリク・ムヒタリアンを帯同しなかった。ドルトムントに所属していた2015年もガバラ戦の遠征メンバーから外れている。そして今回も、ムヒタリアンの姿はない。
「私たちはムヒタリアンをメンバーの一員に加えるため、あらゆる選択肢を徹底的に探った。しかし、ムヒタリアンと彼の家族と話し合った結果、今回はメンバーを外れるということで合意に至った」
アーセナルは公式サイトを通じ苦渋の決断を公表したが、政治的紛争がひとりの選手のキャリアに損害を及ぼすことなどあってはならない。人間は、いつまで戦争を続ければ気が済むのだろうか。
理由は空港が狭いから?
さらにチケット配分でも醜態をさらした。バクー国際空港の収容人員が限られているため、アーセナル、チェルシー両サポーターにはそれぞれ6000枚しか割り当てられなかった。双方合わせても、バクー・オリンピックスタジアムの収容人員6万8700人の20%にも満たない。
UEFAは「バクーのヘイダルアリエフ空港は狭く、一日1万5000人の利用が上限であるため」とチケット配分に関して言い訳しているが、事前調査が甘い、甘い、甘すぎる。
国際的なイベントを開催するにあたり、セキュリティーと交通網の確保は最優先課題である。ヨーロッパ・フットボールの裾野を拡大するための選択だとしても、アゼルバイジャンはヨーロッパリーグ決勝の開催にふさわしい環境とは思えない。
人間は、スポーツの政治利用をいつまで続ければ気が済むのだろうか。