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主将が、闘将が、見たCLの悪夢。
ミランが打ち砕かれたトルコの夜。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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photograph byLFC Foundation/Liverpool FC via Getty Images

posted2019/05/29 17:30

主将が、闘将が、見たCLの悪夢。ミランが打ち砕かれたトルコの夜。<Number Web> photograph by LFC Foundation/Liverpool FC via Getty Images

アンフィールドで行われたチャリティマッチ「リバプール・レジェンズvs.ミラン・グローリエ」のワンシーン。伝説のメンバーたちが再会を果たした。

「あの6分間で負けた」

 レッズの驚異的反撃が始まったのはここからだ。

 後半開始と同時に指揮官ベニテスはDFフィナンを下げてMFハマンを投入し、4-4-1-1から3-5-2へとスイッチした。

 中盤に数的優位ができたことで、MFジェラードは前線へ飛び出す自由を得た。

 54分に主将がヘディング・ゴールで反撃の狼煙を上げると、2分後にはMFスミチェルが低目のミドルを豪快に突き刺し、60分に得たPKは一旦GKジダに止められたが、シャビ・アロンソは諦めずに素早く詰め、同点のボールを蹴りこんだ。

 試合は振り出しに戻ったが、“魔の6分間”に絶対的優位を崩され、追いつかれたミランの心理的動揺は大きかった。

 ビデオを見直して試合を分析したアンチェロッティは「あの6分間で我々は負けたようなものだ」と自著の中で述べている。

 ハマン投入であそこまで戦況が一変するとは正直思っていなかった、と名将は自らが戦況を見誤ったことを認めている。

シェフチェンコのシュートはことごとく……。

 とはいえ、ミランも完全に主導権を渡したわけではなかった。同点とされた後も延長戦でも4点目を奪うチャンスは何度もあった。

 だが、FWシェフチェンコがシュートを撃つ度に、ボールは何かに魅入られたようにレッズの守護神デュデクやDFトラオレに弾き返された。

「リバプールは後半の間、我々よりずっとアグレッシブで、とりわけ中盤でコンパクトにまとまっていた、というのが私の冷静な見解だ。落ち着いて振り返ってみれば、相手の変化に対して違う対応ができたはずだ、と思わないでもない。だが、あれほどの短時間に起きた劇的な展開を読むことは誰にもできなかった」

 アンチェロッティが名指導者たる所以は、どんなに苦い敗戦であっても敗因を冷静に見つめ、次の試合への糧にできることだ。

 だからこそ、2年後の'07年にCLのタイトルを奪回し、'14年にはレアル・マドリーに長く絶えていた欧州制覇をもたらすことができた。

【次ページ】 理屈を超越した時間。

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