沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
デムーロ「馬がひとりで伸びた」
無敗のオークス馬はまだ成長途上。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2019/05/20 11:30
このデムーロの表情である。ラヴズオンリーユーでのオークスは彼にとってもまた格別の勝利だったのだろう。
デムーロ「今回初めて本気で走った」
勝ちタイムの2分22秒8は、'12年にジェンティルドンナが記録した2分23秒6をコンマ8秒短縮するオークスレコードだった。
2着のカレンブーケドールから3着のクロノジェネシスまでは2馬身半の差がついた。
桜花賞に出走しなかった馬の1、2着で決着したのは、エリンコートとピュアブリーゼで決まった'11年以来だった。
デムーロはゴールの瞬間、鞭を持った右手を突き出した。
「最後150mで勝つと思いました。(ラヴズオンリーユーは)今回初めて本気で走った。上がりはずっと伸びつづけていた。第70回のダービーを(ネオユニヴァースで)勝ったので、第80回のオークスを勝つことができて嬉しい。1番人気だし、負けたことのない馬なので、レース前はプレッシャーがありました。素晴らしい馬です。負けたくないという気持ちが強い。ぼくと同じ」
デムーロは、天皇賞・春を勝てば、保田隆芳、武豊、クリストフ・ルメールにつづく、史上4人目の八大競走完全制覇となる。
加速に時間がかかるのがむしろ強さ。
馬に感謝の気持ちしかない、と矢作調教師は言う。
「あらためてすごい馬だと思いました。直線で加速するまで時間がかかりましたが、それは前走も同じで、だからこそ距離がもつのだと思います」
これで4戦4勝。昨年11月に新馬戦と白菊賞を連勝した。が、年が明けて1月、怪我をして細菌が入り、フレグモーネ(化膿性疾患)を発症。脚が腫れてしまった。
「よくなるまでに時間がかかり、春シーズンを完全に休ませようかと悩んだほどでした。オークスを勝つにはフローラステークス(4月21日)からでは厳しいと思い、ちょっと強引にでも忘れな草賞(4月7日)を使いました」
万全ではなかったのに、前走の忘れな草賞を3馬身差で圧勝。そしてこのオークスで大仕事をやってのけた。