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マンCのプレミア連覇を濃厚にした、
主将CBコンパニ「運命」の一撃。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2019/05/11 17:00

マンCのプレミア連覇を濃厚にした、主将CBコンパニ「運命」の一撃。<Number Web> photograph by Getty Images

2008年にマンチェスター・シティに加入したバンサン・コンパニ。今季初ゴールとなった豪快な一撃でリーグ連覇に王手をかけた。

「打つな!」「パスでつないでくれ」

 物理的パワーも十分だった。迫力ある弾道は、かつてマンチェスター・ユナイテッドでミドルの達人とも言われたMFポール・スコールズのよう。それほどの一撃を、ミドルはもとよりゴール自体と縁の薄いCBが放ったのである。価値ある今季初ゴールは、マンC移籍11年目にして初めて決めたペナルティエリア外からのシュートだった。

 試合後に本人も「はっきり聞こえた(苦笑)」と明かしたように、味方は「打つな!」と叫んでいた。ジョゼップ・グアルディオラ監督も「パスだ。パスでつないでくれ」と願っていたと語っている。シュート前に2タッチの時間を与えたレスター守備陣にしても、距離のあるところから外してくれれば思う壺だったのだろう。その場面で、コンパニ自身が「ずっと、いつかは決めてみせるからなとみんなに言ってきた」というミドルが飛び出し、決勝点となった。

 これはやはり、「まぐれ」ではなく「運命」と理解すべきだろう。

実は貴重なゴールを挙げてきたコンパニ。

 得点に関し、照れ臭そうに「数よりも質で勝負できればいい」と言っていたコンパニは、過去にも価値あるゴールを決めてはいる。マンCがプレミアリーグ初優勝を果たした7年前、マンUと優勝争いするなか、奇しくも今回と同じ月曜の夜に行なわれたマンチェスター・ダービーで唯一の得点となったのが、コンパニのヘディングシュートだった。

 また2度目のプレミア優勝を決めた5年前の最終節では、コンパニが至近距離から押し込んだチーム2点目が、ウェストハムからの勝利を動かぬものとした。

 とはいえ、それらを上回る重要度を持つ1点が今季37節でのゴールだ。

 実力伯仲のプレミアでの連覇は、単発優勝より格段に難しい。リバプールとのタイトな優勝争いを通じて、その厳しさを体験することになったマンCとホームの観衆は、得点に苦しんだレスター戦で焦っていた。

 20分と60分にピッチ上とスタンドの双方から声が上がったPKアピールがその証拠だ。コンパニの一発は、「12人目」を含む仲間たちをプレッシャーとフラストレーションから解放し、俄然、タイトル防衛の現実味を高めた。

【次ページ】 古株コンパニは「俺たちの1人」。

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