“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
久保建英、安部裕葵ら不在のU-20W杯。
鍵を握る2年前のイングランド戦とは。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/05/09 17:00
毅然とした態度でメンバー発表会見に臨んだ影山雅永監督(左)。グループステージではエクアドル、メキシコ、イタリアとの対戦を控える。
「全カテゴリーが1つの目標に進む」
関塚技術委員長は言葉を濁しながらこう答えた。
「今日は世界大会に臨むメンバー21名の発表なので、ぜひ影山監督の下で戦う選手たちにフォーカスを当てていただきたい。ただ、我々が考える道としては、しっかりと全カテゴリーが1つの目標に向かって進んでいく。選手がサムライブルーに到達するために、それぞれの本人に適したところをしっかりと見定めて、全カテゴリーの監督が1つの目標に向かって進んでいくのを、技術委員会を含めて、JFAが1つにならないといけない。そこで選手を成長させていく。そこの道は1本にして、みんなで共有して戦っていく。それははっきりとみなさんにご説明しておきたいところです」
もちろんコパ・アメリカは南米の強国たちが本気で優勝を狙って、意地とプライドをむき出しにベストメンバーで臨んでくる権威ある大会だ。その大会に若い選手が出場できるならば、それはそれで大きな経験となる。しかし、心のどこかでこういう大会こそ、現時点でベストのA代表で臨んで欲しかったという気持ちも正直ある。
U-20W杯はNEXTブレイクの宝庫。
U-20W杯は決して軽い大会ではない。FIFAが主催する、正式にW杯という名がつくナショナルチームによる国際大会は3つしかない(U-17W杯、U-20W杯、W杯)。この年代での世界一を決める真剣勝負であり、過去にはここからブレイクした選手も数多くいる。
前回大会であれば、グループリーグで対戦したウルグアイには、ロシアW杯にも主軸として活躍したベンタンクールがいた。日本でいえば、堂安律や冨安健洋もこの大会をきっかけに世界に飛び出し、A代表に定着した。
「南米の国々、ヨーロッパの国々、そして我々アジアを見ると、それぞれのU-20W杯の重要性が違うのかもしれません。我々は極東に位置する島国なので、ヨーロッパみたいに車で1時間走れば、隣の国のチーム、クラブチームと戦えるような日常はないわけですよ。そうなると、U-20W杯とそれに向けての準備、そしてアジア最終予選を戦う、それに向けての準備、そのすべてがかなり貴重なもので、我々にとって不可欠なものではないかなと思います。
なので、我々がU-20W杯に出ること、そして出た先には出来るだけ多くの試合をして、世界のトップにこれから出てくるであろう若者たちと、伍して戦えるのか。その先に行けるのか。そんなギリギリの戦いで持っているものすべてを出して戦える機会は、我々にとって他の国よりもとても重要だと思っています」
影山監督も会見でそう語ったように、この年代の日本代表においてかなり重要な位置付けの大会であることは間違いない。それだけにU-20日本代表がベストメンバーで臨めないことにはもったいなさを感じてしまう。
もちろん前述したように、3人がコパ・アメリカに出場するのだから、それはとてつもなく貴重な経験になることは間違いない。だが、もっと事前に打つ手はあったのではないかと考えてしまう。