援護が1点でも耐える大竹。

　迎えた5月2日。ヤフオクドームに到着した大竹は「駐車位置を変えようかな」とふと考えた。だけど、結局いつもと同じように1番奥に愛車をとめた。

「べつに打ち込まれたわけじゃない。だから変える必要はないかなって。元号が変わったし、何かが変わることを期待していました」

　結果的にはこの日も我慢の試合だった。今宮の適時二塁打はいきなり初回に飛び出したが、援護点はその1点のみ。いわゆるスミ1の展開の中で大竹は7回4安打無失点の力投を見せた。

「調子自体はよくなかった。だけど、悪くても抑える。それが去年は出来なかった。今年は出来るというところを見せたかった」

　本当に絶好調な登板なんて年に2、3回あるくらい。過去に何人かの投手に聞いた話だが、年間を通してローテーションを守るエース級ですらそんなものらしい。

千賀がくれたヒント。

　きっかけとなる出来事が明確にあった。

　今季初登板だったオリックス戦の後である。あの試合は京セラドームだった。遠征先から移動する際、先発投手はチーム本隊とは別行動する場合が多い。この時も大竹はチームよりも先に福岡に戻ることになっていた。

　新大阪駅までのタクシーで一緒になったのは千賀滉大だった。その車内で、千賀の方から話題を持ち掛けた。

「自分の性格上『僕が、僕が』というタイプではない。千賀さんが話をしてくれたので、その流れで僕の方から『調子が悪かったりどこかおかしくなったりすると、ズルズルと行ってしまうんです』と切り出したんです。そこで千賀さんがくれたヒントが大きかった」

　例えば球が浮いてしまった時。あ、浮いたな、で終わらせるのではなく、自分のフォームを客観視することを勧められた。そこでテイクバックが遅かったとの理由が見つかれば、同じ失敗は繰り返さないし、「焦りがなくなり落ち着けるようになった」という。

「歯止めが利かないことがなくなりました。去年とは違う」

　大竹には苦い思い出がある。昨年のクライマックスシリーズ・ファイナルステージ。大事な試合で西武打線に打ち込まれ、「何が原因か分からない」とダグアウトで悔し涙を流した。あの時は自分の投げ方が分からなくなっていた。そんな失敗を、この春に彼は完全に克服してみせた。

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