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川崎に大島僚太のパスが戻ってきた。
キャラメルのような甘美さの隠し味。 

text by

いしかわごう

いしかわごうGo Ishikawa

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photograph byJ.LEAGUE

posted2019/04/17 10:30

川崎に大島僚太のパスが戻ってきた。キャラメルのような甘美さの隠し味。<Number Web> photograph by J.LEAGUE

負傷さえなければ日本随一のゲームメーカーである大島僚太。フロンターレ逆襲のために不可欠な存在だ。

家長も笑みが漏れるような浮き球。

 立ち上がりはどこか様子見だったようにも見えたが、ボールを持ったときの輝きはやはり別格だった。

 前半12分、中、外、中のリズムで相手の守備ブロックを揺さぶり、右サイドでの崩しに中央から顔を出すと、背後を走っていた家長昭博の胸もとに、浮き球を使った絶妙なパスでボールを届けた。

 惜しくもトラップが乱れて決定機にはならなかったが、大島からのキャラメルを掴み損ねた家長の表情には、どこか笑みが漏れていたようだった。

 相手はコンパクトな陣形で守っており、小雨が降っている影響でピッチコンディションもさほど良好ではない。ならばと地上で敵と味方が密集する渋滞ぶりを見ながら、“空”を使う選択とそこに届ける技術を簡単に出せてしまうのが大島の凄みである。

知念の決勝弾を導いたパスの意図。

 51分に演出した決勝弾の場面には、それが凝縮されていた。

 この時に大島が選択したのは、地上を通すグラウンダーではなく、またも空を使った浮き球のパスだった。

 川崎は前半途中に知念と小林悠の2トップにしたことで、4バックで守る相手センターバックとは中央で2対2の状況が瞬間的に作りやすくなる。その瞬間を見逃さず、大島は弧を描く軌道で前線にロングボールを配球した。

「知念は背後を狙ってくれる。(相手の守備が)3枚よりも4枚の方が、知念や悠さんが背後を取ろうとしたとき、ひとりひとりの関係なので背後を取りやすいです。そこは見逃さないようにして蹴りました。思ったより(ボールスピードは)弱かったですけど、知念がうまくやってくれました」(大島)

 イメージよりもボールスピードは弱かったようだが、滞空時間の長いボールになったことが受け取る知念にとって極上のキャラメルとなった。マッチアップしていた鳥栖のセンターバック藤田優人はそれほどサイズがあるタイプではない。うまくエアバトルに持ち込んで競り勝つと、3試合連続得点となるシュートを豪快に突き刺した。

 知念も計算通りだったと胸を張る。

「リョウタくんは奥をよく見ている。ああいう話をしていたし、うまくいかないときはシンプルに裏に蹴って欲しいというのは言っていました。ロングボールで競ったら、ああいうことも起きる。(藤田との競り合いは)スタッフからも言われてましたし、個人的にも狙っていました」

【次ページ】 「ケガなく終われたので良かった」

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