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川崎に大島僚太のパスが戻ってきた。
キャラメルのような甘美さの隠し味。
posted2019/04/17 10:30
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph by
J.LEAGUE
「アンドレスはボールをパスするのではない。キャラメルを配るんだよ」
2003年から2008年までFCバルセロナを率いたフランク・ライカールトは、アンドレス・イニエスタのプレーについて、そんな独自の言い回しで表現したという。
現在ヴィッセル神戸でプレーするこの世界最高峰の選手は、体勢をほんの少し変えるだけでリズムを作り、相手を引きつけ、そして1本のパスで局面を打開してしまう。
そうやって、まるでキャラメルを配って喜ばせるがごとく、美味しいパスを味方に配給するのである。
この言い回しを借りるならば、Jリーグのチャンピオンチームである川崎フロンターレにもキャラメルを配ることのできる選手がいる。
背番号10を背負う大島僚太だ。
4月14日のJ1リーグ第7節・サガン鳥栖戦で復帰を遂げると、弧を描く美しいパスで知念慶の決勝弾をお膳立てし、チームの勝利に貢献。さすがの存在感で、見るものをうならせるプレーぶりだった。
乗り切れないチーム状況の中で。
さかのぼること、約1カ月。
3月10日、横浜F・マリノス戦のウォーミングアップ中に左太ももに違和感を覚えたことで、大島はキックオフ直前に欠場となった。その後チームはACLとの強行日程も相まって、リーグ戦6試合を終えて1勝4分1敗。どこか乗り切れない状況が続き、4月10日のACL・蔚山現代戦でも終了直前にまさかの失点を喫し、韓国でショッキングな敗戦を喫している。
どこか重苦しい状況下で、明るい材料が大島の復帰だった。サガン鳥栖戦の前々日、全体練習に合流した感想を求められると、技術面や体力面よりも感覚面のコメントを述べたのが、実に彼らしい。
「久しぶりに選手がプレーしているところと同じところに立つと、みんな早いなと(苦笑)。1カ月離れるとこうなるというのは感じました。頭の中にどれだけ選手の配置が入ってプレーできるのか、というところですね」