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川崎に大島僚太のパスが戻ってきた。
キャラメルのような甘美さの隠し味。
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/04/17 10:30
負傷さえなければ日本随一のゲームメーカーである大島僚太。フロンターレ逆襲のために不可欠な存在だ。
「ケガなく終われたので良かった」
リードしてからの川崎は、いつも以上に慎重に試合を進めた。巧みにボールを動かす舵取り役として、大島はチームをコントロールし続けた。
「あれだけパワーのある選手がいるので、押し込まれることも理解した上で、多少は我慢すること。あとはどうやって自分たちの時間帯に持っていくか。追加点を取りたかったですが、無理に(動いて)自分たちから穴を開ける必要もないので。僕たちのボール時間を長くしようと思っていました」(大島)
フェルナンド・トーレスなど攻撃陣3枚を投入し、後半の早い段階で総攻撃に出てきた鳥栖に対して、鬼木達監督は守備の強度を上げる采配で受け止める選択をする。ピッチにいる選手たちも、失点という事故を起こさないためのリスクマネジメントを徹底し続けた。
そうやって掴んだ復帰戦でのリーグ戦2勝目。試合後のミックスゾーンで、安堵の表情とほんの少しの笑みを浮かべた大島僚太は、こんな感想を口にしている。
「ケガなく終われたので、とりあえず良かったなと思います。あとは徐々に思い出しながらやれればなと思います」
おそらく本音だろう。
そして、思い出しながらやるということは、まだ感覚的に鈍っている部分に心当たりがあるということだ。大島僚太が生きている世界は、大島僚太にしか見えない世界なのである。試合を重ねるごとに感覚を取り戻し、より研ぎ澄ませていくはずで、そうした凄みを取り戻した時の彼が、国内最高級のプレーを見せてくれることに誰も異論はないだろう。
復活した中盤の心臓とともに、王者の巻き返しも始まっていく。