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疑問符だらけの男、スターリング。
なぜペップに重用され続けるのか?
text by
フィリップ・オクレールPhilippe Auclair
photograph byAlain Mounic/L'Equipe
posted2019/04/16 10:30
いまやマンチェスター・シティの大黒柱と言って良い存在にまでなったラヒーム・スターリング(中)。
徹底的に暴かれる私生活。
2歳のとき父親が殺されロンドンに移住して以来、ずっと彼を養い続けてきた母親のナディーヌに家を買ったときには、派手な装飾を施したその豪邸の値段(100億円を越える資産を持ちながら、わずか3億6千万円ぽっち!)に思わず人々の息が詰まった。今や大富豪となったスターリングであるのに、それほどの買い物ですら「プライマーク(有名な激安ファッションチェーン)」でディスカウントするほどケチであるのかと。
メディアの中には彼の私生活を徹底的に暴くものもあった。
ある日のそれは彼の頬髭であり、別の日は右足のふくらはぎに施された、多くの誤解を生んだカラシニコフのタトゥーであった。それは彼にとっては、父親を殺した銃には絶対に触れないという決意の現われであり、相手GKを打ち破り続ける武器が右足であることを示すものであった。
さらに別のゴシップは、若いときに彼が作ったとされる子供たちだった。噂によればそれは3人であったが、彼自身が認めるのはひとりだけである。
そうしたメディアの暴露も、スターリングの生き方を変えることはできない。
イングランドはいつの日にか、街のギャングに対してもノーと言うことができ、努力でサッカー界の頂点に立ったスターリングを、人種差別に対する防波堤――暴力や女性蔑視に対する守護のシンボルとして認めることになるのだろう。
サッカー選手は彼らの価値に見合った扱いを受けてはいないことを、人びとはもっと認識する必要がある。
グアルディオラは最初から分かっていた。
幸運なことにシティはスターリングに相応な評価を与えている。当初から、ペップ・グアルディオラは最も注目すべき選手であると認識していた。
2017年夏にソーシャルアカウントで遍く広められたクリップには、グアルディオラがスターリングに対し激しい身振りで激高している様子が映し出されている。
彼がそこまで感情を露わにするのは、バイエルンでヨシュア・キミッヒに対してそうであったように――最も信頼を寄せる選手に対してだけである。