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失点わずか1。堅守・広島に現れた
クリアをパスにできる男、吉野恭平。
text by
石倉利英Toshihide Ishikura
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/04/13 17:00
城福浩監督の体制下で堅守を築き上げているサンフレッチェ。その中で吉野恭平が台頭しつつある。
佐々木、野上からも細かな指示。
守備について厳しく要求しているのは、城福監督だけではない。ともに3バックを形成する佐々木と野上からも、細かい指示が飛んでくると吉野は言う。
「ポジショニングや体の向きについて、口酸っぱく言ってくれます。それで余裕ができて、かなり周りが見えるようになってきました。相手が蹴る前から予測してポジションを取れているときもあります」
佐々木は吉野の成長を、近くにいるからこそ、より強く感じている。
「開幕当初とは、ずいぶん違います。あいつがいるからこそ、僕らは任せてボールに行くことができる。ゴールを守るために何がいいかと考えながら、僕とガミ(野上)と話し合いながら守れているのは大きいです」
本人は「危機感しかない」。
もっとも、本人は「危機感しかない」と言う。防げなかった今季唯一の失点シーンが、記憶に残っているからだ。
清水との開幕戦の30分。相手のFW中村慶太からの縦パスがMF金子翔太に入ったとき、マークしていたFW北川航也を一瞬、フリーにした。金子のダイレクトパスに右足を懸命に伸ばしたが触ることができず、ボールはエリア内に抜け出した北川へつながって、先制点を決められた。
「少しでも気を抜いたら、あんなふうにやられます。レギュラーポジションも、少しでも気を抜いたら奪われる。ベンチにも、ベンチ外にも良い選手がたくさんいて、良い競争があるからこそ、そう感じています。競争を勝ち抜くために、毎日やっていく」
もちろん、譲るつもりはない。叱咤激励してくれる佐々木と野上に冗談交じりで感謝しながら、望んでいた試合出場と、さらなる成長、チームへの貢献を誓う。
「言われ過ぎて、耳にタコができそうですけど(笑)、独り立ちできるように。口酸っぱく言ってくれて、本当に感謝しています。もっと自分の良さを出して、攻撃にも絡んでいけるようにしたいです」