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失点わずか1。堅守・広島に現れた
クリアをパスにできる男、吉野恭平。
text by
石倉利英Toshihide Ishikura
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/04/13 17:00
城福浩監督の体制下で堅守を築き上げているサンフレッチェ。その中で吉野恭平が台頭しつつある。
残留を決意させた城福監督の言葉。
「ずっと出られない状況で京都に行き、試合に出る充実感を知った。試合に出たい思いが強かったので、どうしようか悩んでいました」
昨季終了後の心境を、こう振り返る。そんな吉野に残留を決意させたのは、城福監督の言葉だった。
「いろいろなチームでプレーできるだけのサッカーセンスを、彼は持っています。でも年末に話したとき、『このトップ・オブ・トップのところで、しのぎを削りながらプレーするチャンスを逃したら、サッカー選手として悔いを残すぞ』と伝えたんです」
吉野にとっては、予想外の言葉だった。
「監督は、お前の好きにしていい、と言うと思っていました。でも『しっかりやってくれれば、お前の力が必要だ』と言ってくれた。それなら持てる力を100パーセント発揮して、ダメなら仕方がない。あの言葉で、トライしてみようという気持ちになれました」
クリアするような形でもパス。
心を決めたのなら、あとは力を尽くすだけ。
「覚悟を決めて広島でやることにしたのだから、試合に出るための準備を、オフシーズンからやってきました。たとえ試合に出られなくても、しっかりやることは決めていた」
強い気持ちがプレーを研ぎ澄ませ、指揮官の評価を勝ち取った。開幕から先発に名を連ねることで、表情には充実感が漂う。昨季までは限られた時間で求められる仕事をする必要があったが、「先発なら、90分間でチームが勝つためにどうすべきかを考えることができる」という余裕も生まれている。
持ち味であるボールコントロールは、評価ポイントの1つ。城福監督も「本来ならクリアするようなボールを収めて、パスをする。見た目は派手ではないけれど、クリアをパスにする貢献度がある」と語る。
一方で指揮官の守備レベルへの要求は高く、厳しい。
「守備は絶対なので、もっと強さを要求したいです。相手から突かれるようになったら、彼のポジションはない」