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ひねり王子+ド根性男の白井健三。
足首痛を押してのW杯3位に「幸せ」。 

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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photograph byAFLO

posted2019/04/15 07:30

ひねり王子+ド根性男の白井健三。足首痛を押してのW杯3位に「幸せ」。<Number Web> photograph by AFLO

故障を抱えながら1位のサミュエル・ミクラク(86.599点)、2位の谷川航(85.665点)に継ぐ3位に輝いた白井。

跳馬、鉄棒での着地をこらえた。

 まずは足首にもっとも負担のかかる1種目めのゆか。

 縦回転とひねりを組み合わせたH難度の「シライ3(伸身リ・ジョンソン)」はおろか、最高でもE難度の技しかできない状況だったが、白井はポディウムに上がる喜びを全身で感じていた。

 構成難度は普段なら7.2点だが、6.2点まで下げての演技。これをしっかりまとめると、出来映えを示すEスコアで8.233点をもらい、8選手中2番目の合計14.433点で好スタートを切る。

 続くあん馬では、「落下しないようにという意識が強くて旋回が小さくなった」(白井)というが、高所から垂直方向に着地することで不安の大きい3種目めのつり輪を危なげなく終えて波に乗ると、4種目目の跳馬では、自らの名のつく高難度技の「シライ/キム・ヒフン(伸身ユルチェンコ3回ひねり)」をプライドたっぷりにピタリと着地した。

 5種目めの平行棒では、E難度の「マクーツ」で右のバーを握り損ねるミスを犯して12点台にとどまったが、最終種目の鉄棒では背面車輪を入れる新しい構成をきれいにまとめ、着地もこらえた。

「幸せに変換することができました」

 白井は6種目合計82.964点で3位。同い年で社会人1年目の谷川航(セントラルスポーツ)が85.665点で2位、サミュエル・ミクラク(米国)が86.599点で優勝した。

 全演技を終了した後の取材エリアでは、幸福感と充実感を存分に語った。

「今まで当たり前にやっていたことができる幸せがあると感じました。平行棒の反省も、(欠場した)アメリカンカップではなかったことですから、幸せに変換することができます」

 テンションの高いまま、言葉を継いでいく。

「これだけ調整不足で試合に出るのは常識的にない。それでも周りに支えられてプラスの感情が生まれた。きょうだけはここまで耐えられた自分を褒めたいです」

【次ページ】 リオ五輪前、内村航平との逸話。

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