球体とリズムBACK NUMBER
FC今治→J1湘南加入の小野田将人。
岡田武史と曹監督の言葉で急成長中。
posted2019/04/06 07:00
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
J.LEAGUE
人の表情は変わっていくものだ。経験やきっかけ、内面の充実などによって、それは変化していく。スポーツの現場でもよく見られるものだ。
湘南ベルマーレに今季から期限付きで加入した小野田将人を見ていて、あらためてそう感じた。1月11日のクラブ新体制発表の会見で壇上に上がった彼は、とても初々しく見えた。
JFLのFC今治から一足飛びにJ1に挑戦する22歳のDFは不慣れにマイクを持ち、「(今治の岡田武史代表と)曹監督は似たところがあります。でも曹さんの方が優しいです」と頼りなさげな笑顔を浮かべて言い、会場を和ませた。
彼は一体、どんな選手なのだろう? そう思い、その後に話しかけてみた。近くで見ると、アスリートというよりもペットショップの店員さんみたいな印象を受けた。失礼を承知で言えば、大観衆が集まるスタジアムで堂々とプレーできるようなプロのフットボーラーには見えなかった。少なくとも、その時点では。
仙台戦で初先発初得点をマーク。
ところが、3月17日に行われたJ1第4節のベガルタ仙台戦で小野田はさっそく驚きを提供した。負傷者の影響もあって3バックの左でJ1初先発を飾ると、43分には初得点を記録。しかも形は守備者に似つかわしくないものだ。
セットプレーから押し込んだわけではなく、自陣でのパス交換から持ち上がり、最後はセンターフォワードの山崎凌吾とのワンツーでボックス内に滑り込みながら仕留めている。あんな風にアタッカー出身のDFが巧みなドリブルで中央を侵略してくれば、相手は捕まえきれないだろう。
湘南が2-1の勝利を収めた後のインタビューでは、「自分のいいところは出せましたけど、まだまだ甘い部分もあるので、今後の課題としたいです」と、引き締まった表情で受け答えしていた。時折、本来の優しい笑顔が覗きそうになってはいたけれども。