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秋山翔吾、筒香嘉智が抜けたら……。
メキシコ戦で見えた侍ジャパンの遠謀。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2019/03/11 17:50
メキシコとの2試合では、上林誠知の「動く球」への対応力が際立った。1番起用のメドは立ったか。
メジャーの「動く球」への対応を。
ボールを引きつけて左右に打ち分けられる秋山のスイングスピードとバットコントロールは、日本人で右に出る選手はいない。海外投手独特の動くボールへの対応という点で、国際試合では代わりのきかない選手の1人だったわけである。
その秋山がこのオフにもメジャー移籍となれば、東京五輪はもちろん、11月の「プレミア12」で日本代表に参加できる可能性は、ほぼ皆無となる。
代えの利かない存在だった秋山に代わる1番打者は一体誰になるのか?
そのミッションの答えがメキシコ戦で見えてきた。
ソフトバンクの上林誠知外野手である。
「どの投手でも打っていけるかなと」
試合前のスタメン発表。
オープン戦ではここまで4試合で13打数2安打の打率1割5分4厘と絶不調で、8番を打つこともあっただけに、いきなりの1番起用は予想もしていなかったという。
「1番目に呼ばれるとは思っていなかったので、少し差し込まれてしまいました」
こう振り返った上林だが、第1打席で初球のストレートを中前にはじき返すと、3回の第2打席もセンター前安打。7回の1死無走者からの第4打席も右前安打と3本の固め打ち。何より五輪の1番候補として存在感を示せたのが、メキシコ投手陣の動くボールを全く苦にせずに打ち返していたことだった。
「よく(ボールが)動く、動くと言われるんですけど、確かに動きますが、バッティングはタイミングが一番大事なんです。そこさえ合わせていければ、どの投手でも打っていけるのかなと思います」
フル代表初参加となった昨年の日米野球でも21打数10安打と圧倒的な数字を残して大会首位打者にも輝いている。
オープン戦では逆方向を意識しすぎて、逆に打つときに左肩が下がってしまう悪い癖が出ていた。メキシコ戦でも、5番に入った第2戦は4打数2三振と決して絶好調ではない。それでも自分のタイミングでボールを捉えることに専心できれば、ベース板の上で大きく動くようなメジャー仕様のボールでも苦にすることなく捉えることができる。
そういう意味では国際試合で1番を任せられる、秋山の代役をこなせる数少ない選手と言えるわけである。