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トレランレースで参加者が滑落死。
主催者が考えた山における責任の行方。
text by
千葉弓子Yumiko Chiba
photograph bySho Fujimaki
posted2019/03/10 11:00
2018年11月に開催されたトレランレース「FunTrails」で挨拶をする奥宮俊祐。
それでも自然に身を委ねたいと願ってしまう。
主催レースでの死亡事故と、ライバルの遭難事故。2つの事故を通して、奥宮は山が「死」というリスクと常に隣り合わせであることを痛いほど思い知らされたが、「それでもやっぱり、自分は山が好きだ」という。
自然の中に身を委ねたいと願うのは生物である人間の本能でもあり、トレイルランナーという生き方を選んだ原点でもある、と。
「だからこそ、僕らは起こってしまったことから学ばなければいけない。成長していかなければならないんですよ」
自然はときに一瞬で人の命を奪う。その命は決して1人のものではなく、家族や仲間、多くの人たちと繋がっている。ひとつの「死」は思わぬ人の人生をも巻き込んでいく。
だがそれでもなお、自ら選んだ方法で「命を燃やして生き抜きたい」と渇望するのが人間だ。私たちにできること、それは考えることを止めず、とりまく世界を「想像し続けること」なのだろう。
【プロフィール】
奥宮 俊祐 Shunsuke Okunomiya
1979年生まれ。プロトレイルランナー。中高は陸上部に所属し、東海大学で箱根駅伝を目指すが夢は叶わず。卒業後、パン職人を経て自衛隊に。2010年に自衛隊を退職し、IT企業で福利厚生の仕事をしながら本格的にトレイルランニングの世界へ。2015年にFunTrails合同会社を立ち上げ、トレイルランのイベントや講習を実施し、秩父と奥武蔵を舞台にした『FTR100(100km)』など3つのレースを主催する。