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サニブラウンが日本タイ記録で復活!
60m走6秒54ってどのくらい凄い?
posted2019/03/15 11:30
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph by
Ayako Oikawa
「気持ちよく走れましたね」
全米大学室内選手権、60mの予選で室内日本記録に並ぶ6秒54の好記録。一緒に走った先輩に「自己ベスト、やったな」と褒められると、サニブラウン・アブデルハキーム(フロリダ大)は照れ笑いを浮かべた。
アメリカでの大学生活2年目の今季は、1月中旬から室内レースに参戦。初戦で6秒62と自己ベストを出し幸先のいいスタートを切ったものの、翌週は発熱の影響もあり不調。その後もパッとしない成績が続いていた。
しかも、この大会は学生の室内最高峰レース。60mにエントリーした16人中、サニブラウンの持ちタイム(6秒60)は8番目の記録で、予選通過さえ楽観視されていたわけではなかった。加えて、60mはささいなミスが命取りになる。大会前は「短すぎるし、60mはあまり……」と気乗りしない発言もしていたが、大きな試合で本領を発揮した。
翌日の決勝ではスタートで出遅れるも、後半猛烈に追い上げ、6秒55で3位。レース前の3月6日に20歳の誕生日を迎え、本人も「いいスタートが切れました」と笑顔を見せた。
個人はもちろんフロリダ大学の総合優勝もかかった大きな試合で、集中力の「スイッチがオンになりました」という。チームに6点を加点し、総合優勝に貢献。アメリカで学生としては初の表彰台に乗り、チームも連覇を果たしたことで、「やるべきことをやっただけ」というさりげないコメントの中にも、喜びの感情は隠せなかった。
価値ある「専門外」での好記録。
100mなら「サブ10」、つまり9秒台が世界の仲間入り、といったイメージがあると思うが、60mはタイムのイメージが湧かない人がほとんどだろう。サニブラウンの出した6秒54は今季世界7位に該当する好記録だ(先月、バーミンガムGPで6秒54を出した大阪ガス・川上拓也も同様)。
今季世界トップは中国の蘇炳添で6秒47、サニブラウンの大学の先輩、ホロウェイが6秒50で2位。ちなみに世界記録は昨年、アメリカのC・コールマンが樹立した6秒34で、100m9秒台で走る選手の多くが6秒4~6秒5台前半を出している。
後半型のサニブラウンが今回、「専門外」(本人談)の60mで好記録を出したことは、100m9秒台に大きく近づいたと言えるだろう。