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真の王様はネイマールかムバッペか。
PSGとカタールが費やす大金と思惑。
text by
グレアム・バーガーGraham Berger
photograph byAFLO/Getty Images
posted2019/02/12 08:00
PSGの象徴となったネイマールとムバッペ。2022年W杯開催地であるカタールの思惑もそこにはある。
PSGブランドは失敗と同義に。
だとしたら、冒頭のバルセロナに喫した世紀の逆転負けは、カタールを辱めるものだ。世界中の人々が見守るなか、彼らは赤っ恥をかかされたのだから。
「PSGブランドは失敗と同義になった」と書いたのは『L'Equipe』紙のデュリック記者だ。
「高く飛翔した後に叩き落されるのなら、そこに意味はない。カタールの計画は危機に晒されている」
あるいは、恥辱はすでに味わっていたとも言える。その前のシーズンに、PSGは準々決勝でマンチェスター・シティに屈した。このクラブはカタールの隣国アブダビの持ち物だ。最大のライバルとも言える彼らにだけは、負けたくなかったはずだ。
シティに敗れ、翌シーズンには不名誉な歴史的敗北。王族の我慢は限界に達した。
「FFPの抜け道を探すのだ!」
あのバルセロナ戦のちょうどひと月後、国家元首のアルタニはチームの練習場を抜き打ちで訪れている。彼がPSGのフロントへ突きつけたメッセージは明確だった。
〈プランAがうまくいかなかったため、プランBに移行せねばならない。そして今回は物事を首尾よく進める必要がある〉
つまり、これ以上のミスは許されない、ということだ。
日刊紙『Le Monde』によると、アルタニはひどく立腹し、会長のアルケライフィにこう言い放ったという。「あんなルール(UEFAのファイナンシャル・フェアプレー=FFP)はどうでもいい。抜け道を探すのだ。カタールの名を高めるためなら、銀行をひとつ潰してもいい!」
同国はそれまでも出稼ぎ労働者への待遇などを批判されてきたが、'17年6月に決定的な逆風に晒される。近隣のアラブ諸国との国交が断絶されたのだ。主な理由は、カタールがテロを支援していると目されること。この由々しき状況を受け、アルタニは世界の視線を逸らそうとした。多くの人の胸が高鳴るものに、スポットライトを当てようと。そう、ネイマールとムバッペに。