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真の王様はネイマールかムバッペか。
PSGとカタールが費やす大金と思惑。 

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グレアム・バーガー

グレアム・バーガーGraham Berger

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photograph byAFLO/Getty Images

posted2019/02/12 08:00

真の王様はネイマールかムバッペか。PSGとカタールが費やす大金と思惑。<Number Web> photograph by AFLO/Getty Images

PSGの象徴となったネイマールとムバッペ。2022年W杯開催地であるカタールの思惑もそこにはある。

ネイマールとどっちが主役?

 ところが皮肉にも、ムバッペの飛躍がクラブに新たな問題を招いている。人気沸騰する“フランス国民の息子”が、はからずもネイマールから主役の座を奪おうとしているのだ。

「ネイマール対ムバッペ、真の争い」

 リーグアンの今季開幕日、『Liberation』紙の1面にはこんな見出しが躍った。同紙のシュニデル記者はこう書いている。

「メインキャストはどっちだ? ネイマールの輝きは薄れている。W杯で失意のうちに姿を消したように。かたや、ムバッペはパーフェクトに近い出来だった」

 新シーズンは2人の一挙手一投足に注目が集まる。時にはうがった見方もされるだろう。しかしカタールからすれば、両選手にはこれまでどおりクラブに残り、輝き続けてもらう必要がある。トゥヘル新監督にとって最も重要かつ難しい仕事は、彼らのエゴを制御することになるはずだ。そして最低でもCLの4強に残り、2年契約の間に欧州制覇を達成しなければならない。

「誰もがカタールを知っている」

 今オフはFFPの規制もあり、正式に迎えたムバッペの移籍金以外、巨額の投資を抑えたが、40歳のGKブッフォンをフリーで迎えている。元イタリア代表の大ベテランの先は長くないし、GKにはアレオラとトラップがすでにいた。

 それでも彼を獲得したのは、その優雅な存在感と高い知名度に期待したからだろう。世界中がPSG、そしてカタールを語る機会を絶やしてはならない。中東の湾岸国の狙いは、クラブの買収に動いたときから、そこにあった。

「2011年以前に、カタールを知っていた人はいたか? フランスでは、地政学か燃料に関わる人だけだった」とボニファスは言う。「だが今や、誰もがカタールを知っている。PSGの買収とシャツの胸のエッフェル塔、そして'22年W杯開催権により、カタールは世界地図に確かな存在感を示すようになった」

 ネイマールとムバッペ、彼らのプレゼンスこそがそれをより強固にするのだ。

(翻訳・構成=井川洋一)

(Number960号『ネイマール ムバッペ カタールの野心をかなえるWエース。』より)

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