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真の王様はネイマールかムバッペか。
PSGとカタールが費やす大金と思惑。
text by
グレアム・バーガーGraham Berger
photograph byAFLO/Getty Images
posted2019/02/12 08:00
PSGの象徴となったネイマールとムバッペ。2022年W杯開催地であるカタールの思惑もそこにはある。
ネイマールを取るしかなかった。
先に迎えたのはブラジル代表FWだ。
『Le Parisien』紙が「世紀の移籍」と評したネイマールの加入は望み通りの衝撃を生み、パリの街は空前の騒動に包まれ、世界のフットボール界を揺さぶった。5カ月ほど前に屈辱を与えられた相手から、エースを引き抜くことに優るリベンジがあるだろうか。ネイマールこそ、バルセロナの大逆転劇を可能にした選手だった。
「あの移籍のプランは5、6月のドーハで考案された」と元PSGの上級スタッフは『Le Monde』紙に語っている。「カタールは評判が落ちることに耐えられず、大きな行動を必要としていた」
また王族と近い筋はこう証言している。
「君主アルタニは真のビッグネームを欲しがっていた。予算に限りはなく、時間は3、4カ月あった。つまり、アルケライフィ会長には選択の余地がなかった。ネイマールを取るしかなかったのだ」
ネイマール自身の意図はどこにあったのか。世界屈指のクラブとリーグを後にし、明らかにレベルの落ちる場所へ向かうのは、都落ちと言えまいか。当時25歳で、これから全盛期を迎えるというのに。そうした疑念に対し、本人はこう主張した。メッシの影から離れ、バロンドールを手にできるようになりたいからだ、と。
途方もない巨額がバルサへ。
この大胆なオペレーションには巨額のカネが費やされたが、そこには複雑な財政状況があった。
'14年にPSGはFFPの規定に反したことで、UEFAから6000万ユーロの罰金を科された。以降、クラブの財政状況は厳しい監視のもとに置かれている。ルールは3シーズン総額の赤字が3000万ユーロを超えてはならないとしている。
しかしバルセロナがネイマールにつけた値札は2億2200万ユーロで、カタールは満額を支払った。その移籍金は過去最高額の倍を軽く上回る。
スペインのラ・リーガはFFP規定に背くとして、PSGからの契約解除金を拒否する構えを見せた。だが結局はネイマールのデビューが1週間だけ遅れたにすぎなかった。途方もない巨額が耳を揃えてバルセロナへ用意されると、それ以上誰も異議を唱えなくなり、「解決法が見出された」と『Le Monde』紙は綴っている。