“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
J2山口の第2GKがフロンターレに。
下剋上を狙う藤嶋栄介の愛され力。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/01/23 17:00
GKにはセービング以外にも様々な資質が必要とされる。藤嶋栄介の人間力をもってすれば川崎の水にもなじむはずだ。
'17年終了後には無所属状態も。
コーチ陣だけでなく、クラブスタッフにもきちんと電話を入れるように、藤嶋は非常に気配りができ、人に愛されるキャラクターがある。それだけではなく、大津高校時代から年代別日本代表に選ばれ、福岡大でもユニバーシアード日本代表に選ばれるなど、非常にポテンシャルが高いGKだ。
サガン鳥栖でプロキャリアをスタートするが、怪我とプレーの波があり思うように出番が得られず、ジェフユナイテッド千葉、松本山雅FCにレンタル移籍をするが、いずれも結果を出せず、2017年シーズン終了後に松本、鳥栖の両チームから契約更新をもらえず、無所属状態になった。
だが、ロアッソ熊本が練習環境を与えてくれた結果、ギリギリで山口入りが決まった。2018年シーズンは開幕スタメンを掴むと、第23節までは正守護神としてプレーしたが、それ以降はセカンドGKに回った。
「良い想いも悪い想いも両方味わえた1年でした。今季、土肥さんからは『大胆さを普通に出せれば、間違いなくもっとお前は上に行ける』と言われていた。僕の持ち味はフィフティー・フィフティーのボールや、6、7割方相手に有利なボールでも積極的に飛び出してキャッチしたり、弾けること。この積極性を出したことでレギュラーを掴めたのに、失点が重なるとどんどん安パイというか、リスクを負わなくなっていった。
うまく行かない時こそ、一番どっしりとしていないといけないのに、自分がぶれてしまいました。さらに失点が止まらなくなり、より『何かを変えないといけない』と思いすぎて深みにハマって、自分のコンディションすらも崩してしまった」
第2GKからの返り咲きは……。
セカンドGKからのレギュラー返り咲きを狙ったが、第36節・FC岐阜戦のアップ中に味方のシュートが頭部に直撃。2週間の離脱を強いられると、復帰直後に再び負傷。ピッチから遠ざかった。
「自分の中で『一刻も早くレギュラーを奪い返さなきゃ』という想いとは裏腹に、アクシデントが続いて、そこからスタッフの人たちにも『休め』と言われたが、無理をしながらやってしまった。いつまでも100%のコンディションでプレーできないし、怪我も悪化するし……。
今までのプロ人生で、大事なところで怪我をして外れることが多かったので、『それを払拭したい』と思いすぎた。あそこでしっかりと休んでおけば良かったと思う」
決して満足のいくシーズンではなかった。「自分の弱さを改めて痛感した」と語るが、これもすべてはプロ5年目で正GKを初めて手にできたからこそである。