“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
J2山口の第2GKがフロンターレに。
下剋上を狙う藤嶋栄介の愛され力。
posted2019/01/23 17:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
覚悟の移籍は彼のプレーと人間性が引き寄せたものだった。1月7日、レノファ山口に所属していたGK藤嶋栄介の川崎フロンターレへの期限付き移籍が発表された。
「レノファとの契約を更新した数日後に『フロンターレから話が来ている』と言われてびっくりしました」
突然のオファーだった。すでに山口でもう1年プレーをする事が決まっており、新たなシーズンに意欲を見せていたときに急にやって来たJ1王者からのオファー。
「一度、『来年も山口で一緒に戦います』と残ると決めたのに、それを覆すことはいかがなものかと。レノファには昨シーズン(2017年シーズン)に、所属チームがない状況で拾ってもらって、試合経験を積ませてもらった大きな恩がある。J1昇格やプレーオフ進出に貢献できなかったのに、ここでフロンターレに行く決断をするのはどうかと……。でも、なかなかないオファーだということも理解していて、正直かなり迷った」
霜田監督からも後押し。
しばらく自分で考え込んだ後、大きく揺れ動いた藤嶋は、霜田正浩監督に電話を入れた。
当然のようにオファーのことを知っていた霜田監督は「おう、栄介か。決断したのか?」と電話に出るなり、いきなり尋ねてきた。
驚いた藤嶋は「山口で一緒に戦いたいですが……チャレンジしたい気持ちが大きいです」と素直な心の内を口にした。
この言葉を受けて、霜田監督が発した言葉が、彼の背中を後押しした。
「レノファの監督としては出したくないが、こんな素晴らしいオファーは断っちゃダメだ。この移籍は、いち監督としては困るが、1人のサッカー人としては誇らしい。去年レノファで栄介が途中までやれていたこと、途中から出来なかったことを、フロンターレでさらに上のレベルで磨いて行くことで、もっと成長出来るきっかけにもなるぞ」
川崎への移籍を決意した藤嶋は、土肥洋一GKコーチ、名塚善寛コーチにもすぐに電話を入れ、決断を伝えた。
「土肥さんは『絶対にフロンターレだったら成長できる。去年レノファで成長して試合に出た結果だから、次のステージでもう1つ結果を残せばさらに先が見えてくる』と言ってくれた。名塚さんは『常に謙虚さを持ってやれば、見ている人は見ているし、こういう良いことがあるから』と言ってくれた。コーチ陣全員に電話したら、背中を押してくれた」