“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
J2山口の第2GKがフロンターレに。
下剋上を狙う藤嶋栄介の愛され力。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/01/23 17:00
GKにはセービング以外にも様々な資質が必要とされる。藤嶋栄介の人間力をもってすれば川崎の水にもなじむはずだ。
試合に出続ける難しさと財産。
試合に出続ける難しさ、失点を重ねた時のメンタル、怪我への向き合い方……。リアルに経験できて、大きな財産となった。
「これまで分かっていたようで、分かっていなかったことが多いことに気づけた。クロス、ハイボール、1対1のダイナミックさがウリなのに“うまく、堅実にやろう”と思いすぎて、本来のダイナミックさがなくなっていた。霜田さんからも『最初のように普通にやってくれれば、フィールドも落ち着く。でも後期のお前は凄くこぢんまりしているのが見えた』とはっきりと指摘されていた。
そこに気づいて、自分自身を見つめ直せていたら……。でも、こういう経験があったからこそ、プロの階段を登れたと思います」
彼に必要なものは良い面も悪い面を含めての“経験”だった。そんな藤嶋を川崎は、無所属だった時期からマークし続け、獲得に動いたのだった。
「フロンターレはずっと気にかけてくれていました。オファーをもらった段階で『藤嶋くんがどういう選手で、どういう人間性かもチェック済みです』と言われた。本当にフロンターレ、レノファ、ロアッソさんに心から感謝しかありません」
チョン・ソンリョンらがいるが。
かくして、期限付き移籍ながら藤嶋はJリーグ2連覇中の川崎に加入した。
「失うものは何もない。今までの僕は失ってばかりだった。今回の移籍は今までのキャリアの中で、一番高い所にチャレンジできるチャンス。その中で自分ができることをぶつけたい。たぶん、周りには『どうせ穴埋めで来たのだろう』と思っている人もいると思う。
正GKのチョン・ソンリョンさんは間違いなくJリーグトップクラスだし、新井(章太)さんというセカンドGKがいる。そして安藤(駿介)さんはロンドン五輪代表。当然、僕が3番手、4番手と見られているかもしれませんが、その序列を覆す選手にならないと、フロンターレはおろか、日本サッカーのGKのレベルは上がらないという気持ちで来ました」