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マンC移籍、板倉滉は等々力育ち。
川崎の10番を夢見た少年の13年後。
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/01/17 17:00
2018年はベガルタ仙台で活躍した板倉滉。CBとボランチをこなせる大型タイプだけに、大化けに期待したい。
「ケンゴさん、後ろに目が」
「ケンゴさんとリョウタくんを相手にすると、まったくボールが取れないですね。自分の強みは当たりなので、ガツンと当たりにいきたいのですが、行くとダイレクトでパスをはたかれてしまう。そこでケンゴさんが後ろを向いているときに、うまく視野から隠れて奪いにいこうとしても、それでもポンポンと回されて取れない。
ケンゴさんには『後ろに目がついているんですか?』と聞きたくなりますよ(笑)。でもなんとかケンゴさんからボールを取りたいので、そこを考えながらやっていくトレーニングは楽しいです」
麻生グラウンドで研鑽を積み、プロ初先発を果たしたのは2年目の2016年の5月、Jリーグヤマザキナビスコカップグループステージ第6節・ベガルタ仙台戦だ。センターバックの一角として出場すると、精力的なビルドアップと空中戦での競り合いの強さを見せ、攻守ともに堂々としたプレーを展開。上々のデビュー戦を飾り、試合も勝利を収めている。
ただ、このプロデビュー戦で印象的だったのは、板倉とサポーターの関係性だった。
小学生の時に描いた夢の絵。
試合前のウォーミングアップに出て行ったとき、Gゾーンのサポーターが「滉機到来!見せてやれ川崎魂!!!」という大きな横断幕で激励したのだ。
「好機到来」ならぬ「滉機到来」。そして「川崎魂」。
「サポーターが横断幕を出してくれたし、それで鳥肌が立ちました」と、この文字に板倉は心震えていた。実はそこに10年分の思いが詰まっていたからである。
この仙台戦から遡ること10年前の2006年のこと。
創設されたばかりのフロンターレU-12を指導していた高崎康嗣監督(現:専修大学体育会サッカー部監督)は、ある日、「将来の夢」を書いてくるように選手達に宿題を出していた。
後日、少年達から提出された紙には「日本代表として活躍したい」、「ワールドカップに出たい」と、小学生らしい、それぞれの夢がつづられていた。
そんな中、文字ではなく、絵を描いて提出してきた少年がいた。
板倉滉である。