“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
選手権決勝で勝敗分けた僅かなズレ。
青森山田が流経柏に勝った点とは?
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/01/15 12:15
全国高校サッカーの頂点としての決勝にふさわしかった青森山田vs.流通経済大柏。才能ある選手達と名将同士の激突は素晴らしい試合に。
同点から攻勢続いた青森山田。
63分、右サイドでボールを受けたバイロンがドリブルで仕掛けると、切れ味鋭い切り返しでDF2人を置き去りに。そのままサイドをえぐってからのマイナスの折り返しを、檀崎がダイレクトで冷静に蹴り込んで――青森山田が逆転に成功した。
その後も攻め手を緩めない青森山田に対し、流通経済大柏はDFラインがズルズルと下がりだし、中盤が間延びをしてしまった。
それでも流通経済大柏は正確なロングボールとスプリント力を駆使してカウンターを仕掛け、セットプレーを獲得してゴールに迫っていったのだが、集中力が増した青森山田の守備を破ることが最後までできなかった。
82分にCB関川をFWに上げてパワープレーに出たが、青森山田の選手達は精神的優位に立ち続けていたという。
「関川が前に行ったことで後ろが3枚になっていると思っていたし、気持ちが前に行きすぎて、後ろのケアができていないと思っていたので……裏のスペースを狙っていました」
こう語った“青森山田の頭脳”である天笠が、結局この試合に、とどめを刺すこととなった。
88分、センターライン付近で受けたクリアボール気味のボールを、「後ろで小松の呼ぶ声が聞こえた」からと、反転しながらダイレクトのスルーパスとして蹴り込んだのだ。見事にそのボールは、DFラインの裏へ抜け出しかけていたFW小松慧へ――。
小松はそのまま独走し、GKとの1対1を冷静に制し、3-1。
これで勝負は決した。
「考え方がずっと後手に」
青森山田が試合巧者ぶりを見せつける形で、2年ぶり2度目の選手権制覇を果たし、2年連続の決勝進出を果たした流通経済大柏は、2年連続の準優勝に終わった。
「考え方がずっと後手に回ってしまった。そこでチームを落ち着かせられるのが10番の仕事だったのですが、僕もボールを失ってしまっていたし、守備もうまくできなかった。自分がやりきれなかった……」(熊澤)
勝負を分けた心理のズレ。ハイレベルなチーム同士の戦いだからこそ、こうした僅かなズレが、残酷なほど勝敗をくっきりと分けてしまう。
それを改めて感じることができたファイナルだった。