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小笠原満男はいつも正直だった。
悔しさを胸に戦い続けた男の引退。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2019/01/08 11:30
2018年、クラブW杯のトレーニング中に笑顔を見せた小笠原満男。鹿島を、Jリーグを文字通り牽引した選手だった。
逃したタイトルが何十個も。
そんな小笠原にとって公式戦ラストマッチとなったのが、クラブW杯3位決定戦、リーベルプレート戦。2点差をつけられた76分、小笠原は内田篤人に代わりピッチに立った。
「最後の試合という特別な想いはなく、ただ、なんとか点をとって、勝ちたかった。やっぱり、最後にクラブW杯に優勝して終わりたかったので、悔しかった。でも、そういう想いで終わるのも自分らしいのかなって。
悔いだらけです。獲ったタイトルもあるけど、獲れなかったタイトルが何十個もあるので。今年に限っていっても、ACLは獲れましたけど、ルヴァンも取れなかったし、JリーグもクラブW杯も取れなかったし。悔いばっかりです。代表でも悔しい想いをいっぱいしたいし。自分の人生は悔しい、悔しいの連続で、ライバルもいたし、負けたくない、そういう想いで突っ走ってきたなって思います」
11月のACL決勝戦前後に組まれたJリーグ対セレッソ大阪戦と、柏レイソル戦に小笠原は先発し、控え組の若い選手を率いて2連勝と、決勝戦へ挑むチームをあと押ししている。
「あのとき、まだやれるという想いは芽生えませんでしたか?」と訊いた。
「そういう変な感情はなかった。今だからこそ言うけれど、正直ACLに出たかった。それは僕だけじゃなくて、若い選手たちもそうだと思う。そう思うべきだし。でも、与えられたJリーグの試合で、今までベンチ外で一緒に練習した若い選手たちといっしょに戦って、やっぱり勝たせてあげたかった。
彼らがどう思っているかわからないけれど、ピッチに立つこと、そこに立って勝つということを示したかった。そこで勝てたというのは、チームの財産になるのかなって思うし、みんなで勝つことができて良かったですけど、本音はACL決勝に出たかったです」
果たした任務の達成感以上に、悔しさがまた募っただけだった。
印象的だった鋭い瞳。
鹿島に加入した直後も、U-19の合宿でも、小笠原はにぎやかな選手たちを少し離れた場所で見つめている東北出身の寡黙な少年だった。
印象的なのはその鋭い瞳だ。
ピッチに立てばギラギラとするのだろうが、なにかを射抜くような瞳は、油断とは無縁の飢えた獣のように見えることもあった。
そんな少年は、いつしかクラブの大黒柱に成長した。寡黙さは相変わらずなのかもしれないが、チームの中心に立つ太い柱となり、鹿島アントラーズの25年間を繋いだ。
現役引退会見で、獲れたタイトルの数よりも獲れなかったタイトルの数を数える。それが小笠原満男だ。だから、彼はたくさんの勝ち点を奪い獲り、タイトルを手にしたのだろう。