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東海大学が悲願の総合初優勝。
チームに生まれた箱根駅伝への「執念」。 

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別府響(文藝春秋)

別府響(文藝春秋)Hibiki Beppu

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photograph byYuki Suenaga

posted2019/01/04 16:00

東海大学が悲願の総合初優勝。チームに生まれた箱根駅伝への「執念」。<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

フィニッシュする東海大学の3年・郡司陽大。大会新記録での総合初優勝となった。

エリート以外の選手の奮闘。

 そして8区の区間記録を22年ぶりに更新し、金栗四三杯(MVP)も獲得した逆転の立役者でもある小松も、高校時代は決して大きな実績のあった選手ではない。それでもここまで3年間コツコツと練習を積み上げ、今回の結果に結びつけた。

「監督からはいろんな区間を想定するように言われていました。6区や10区も可能性としてはありましたけど『どこでも良いのでとにかく箱根駅伝を走りたい』というのが正直な気持ちでした。

 中学・高校の頃から箱根駅伝は憧れの舞台だったんです。その舞台に自分がこうして立てて、こんな走りができるなんて、本当に夢のような気分でした。学生三大駅伝を走ったのは今日が初めてですけど、いい練習が積めていたので、緊張はしなかったです。

 監督からは『一番練習がやれているのはお前なんだから、自信をもって走れよ』と言われました。『前の選手が東洋大学との差を詰めてくれるから、お前で逆転だ』と。その通りの展開にできて、本当に良かったです」

 実力も実績もある黄金世代のエリート選手たちは、順当にいけば駅伝を走ることができる。だが、そうでない選手たちは、死に物狂いで箱根駅伝という“夢舞台”を目指さなければならない。それぞれが自ら輝ける場所を探し、そのための努力をし続ける――そんな彼らの必死さが、上位の選手も突き上げ、これまで「速さ」しかなかったチームに「強さ」を生んだのではないか。

 小松は「よく他の選手と『自分たちで黄金世代を食ってやろうぜ』という話もするんです」と語っていた。そんな執念こそが、今回の東海大学の初優勝につながる最大の要因だったように感じた。

「来年、借りを返そう」

 久しぶりに終盤まで勝負がもつれた今回の箱根駅伝も幕を閉じた。

 だが、終わりは次へのスタートでもある。

 レース後、総合2位という結果に終わった青山学院大学のアンカーを務めた鈴木塁人(3年)は、悔しさを押し殺しながら、気丈にこう語っていた。

「走っている途中も、4年生を胴上げしてあげられなかったことが本当に悔しくて。来季からは自分が中心になってチームを引っ張って行かないといけないと思います。

 今回は下級生がチームの足を引っ張ってしまいました。勝者のメンタリティというか、強い選手相手でも競り負けない本当の強さを磨いて行かないと次回大会も優勝は絶対にできないと思っています」

 また、3位の東洋大学も、アンカーを務めた大澤駿(2年)がフィニッシュに飛び込むと、泣きじゃくる大澤に、次期エースの相澤がこんな言葉をかけていた。

「泣くなよ、頑張ったんだから。まだ、最後じゃないだろう。来年、借りを返そう」

 96回目の箱根路に向けた戦いは、もう始まっている。

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