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補強ゼロでも好調維持のトッテナム。
リーグカップで久々の戴冠なるか。
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byGetty Images
posted2018/12/28 16:30
今季もスパーズの得点源であるハリー・ケイン。豪華攻撃陣で今季こそタイトルを掴みたい。
シッソコの復活が大きい。
補強とは読んで字のごとし、弱い箇所にテコ入れしたり、足りない部分を補ったりして強くすることだ。つまり戦力値が及第点であれば、無理をする必要はない。
では、トッテナムの陣容をチェックしてみよう。基本的には各ポジションふたりの駒を揃えている。戦術理解度が一向に高まらないセルジュ・オーリエに不満はあるものの、右サイドバックもキーラン・トリッピアー、もしくはトビー・アルデルバイレルトで十分しのげる。
3バックという選択肢もある。タブロイド紙の「ハリー・ケインのバックアッパーが不在」は的外れな指摘だ。唯一無二のストライカーの代役など、どこを探せば見つかるというのか。
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また、今シーズンはムサ・シッソコの復活も非常に大きい。直近1、2シーズンは低調なパフォーマンスに終始し、サポーターやメディアの批判に晒され、放出候補最右翼にも挙げられていたが、いまや中盤センターとして、2列目の右サイドとして欠かせない存在になった。
同僚のクリスティアン・エリクセンも、「シッソコと同じチームで心底よかった。対戦相手にすれば、彼は“悪夢”のようだからね」と絶賛している。もちろん、ポチェッティーノ監督もシッソコを重視し、ビッグファイトでは先発に起用するケースが増えてきた。
戦力はすでにAクラス。
要するにトッテナムは、シーズン前のプラス・アルファがなくても、その戦力は間違いなくAクラスということだ。補強ゼロはマイナス材料ではなく、現状を見据えた的確な判断といえなくもない。クラブのOBで、現在はコメンテイターを務めるジャーメイン・ジーナスも、古巣の今シーズンを次のように分析している。
「主力の大半は3~5シーズンも同じ釜の飯を食っている。ポチェッティーノ監督も5シーズン目を迎えた。お互いの気心を知り、ピッチ上でもプライベートでも意思の疎通はスムーズだ。
どのタイミングでどういうボールが欲しいのか、交代でピッチに入ってきた選手は監督からどのような使命を託されているのか、細かい説明はいっさい要らない。クラブが熟成してきた証だ。大半の選手が監督を有能な上司として、あるいは頼りになる兄として尊敬している」