フランス・フットボール通信BACK NUMBER
欧州サッカー界の異端児ナインゴラン。
「喫煙、タトゥーをなぜ隠すのか?」
text by
バレンティン・パウルッツィValentin Pauluzzi
photograph bySebastien Leban/L'Equipe
posted2018/12/28 10:00
ナインゴランの背中には、母親の誕生日と命日のタトゥーがある。カトリック教徒でもある。
「最悪の過去が人間を強くすることも」
――それではベルギーという国とあなたの関係はどうなのでしょうか?
「僕は自分がここまで辿ってきた道のりに誇りを持っている。僕が正直で真っ直ぐな人間であるといえるならば、その起源は僕の子供時代にまで遡る。
大変な時代だった。
本当に酷いことがたくさんあって、説明するのは簡単じゃない。
でもそんな最悪の過去が、人間を強くすることもあるだろう。子供たちに模範を示すためにも、今の僕は過ちを犯すことはできない」
――あなたはインドネシアの血を引いています(父親がインドネシア出身)が、名前以外に何が自分の中にあると思いますか?
「あまり多くはないね。その点は否定しない。たしかに外観はアジア系ではあるけれども、僕自身はインドネシアの文化の中では育たなかった。とはいえ自分の出自には誇りを持っている。そうでなければとっくに名前を変えているよ。
父親との関係は今も難しいとはいえ、両親はあくまでも両親だ。あるときインドネシアに彼らを訪ねた。もう一度可能性を探りたかったからだが、残念ながらうまくはいかなかった」
「ドラッグの売買や窃盗で、いかがわしい……」
――では100%ベルギー人であると感じていますか?
「アントワープの人間だという意識は強い。歴史のあるとても素晴らしい街だ。
その中でも僕はリンケルーフェルの出身だ。様々な国からの移民が仲良く暮らしている地区だ。
ドラッグの売買や窃盗で、いかがわしい収入を得ていた人たちもたくさんいた。そんな生活をしたくはなかったから、僕は地域のプロジェクトに最年少で参加した。
サッカーをやりたければ、まず宿題を片づけなければならない。つまりプロになるためには、学業をこなす以外に道はない。そんな子供たちの力になりたいと心から願っている」